(原題:LOUPS-GAROUS)2024年10月よりNetflixから配信されたフランス製のファンタジーコメディ映画。正直言って、あまり上等なシャシンではない。劇場でカネ取ってこの程度のものを見せられれば腹も立つだろう。だが、テレビ画面だと何とか我慢は出来る。一種のタイムスリップ物としてのテイストも盛り込まれていて、その興趣は確かにあると思う。
田舎町に住む一家が、ある日偶然に古びたボードゲームを見つける。早速皆でプレイしてみると、何と15世紀末に全員タイムスリップしてしまう。元の時代に戻るには、毎晩姿を現す恐ろしい人狼(じんろう)たちを退治し、そいつらが持っているカードをすべてボードに装着しなければならない。また、どういうわけか一家にはその世界では特殊能力が備わっており、彼らはそれを駆使して人狼に立ち向かう。
この設定はアメリカ映画「ジュマンジ」(95年)からの流用だと思う視聴者も多いだろう。だが、出来の方は“本家”には及ばない。そもそも。主なモチーフは「ジュマンジ」で出尽くしていて、現時点でこのネタをやるのは“証文の出し遅れ”だろう。もっとも作り手の方はそれを承知しているらしく、何とか新味を出そうと腐心している。それは、この一家の構成だ。
主のフランクとスザンヌの夫婦は共に再婚。それぞれに連れ子がいて、肌の色も違う。そしてスザンヌは弁護士だ。そんなプロフィールを中世の人間に説明しても、誰も理解しない。それどころか、読み書きが出来る女性は魔女扱いされる始末。そのあたりのギャップが笑いを呼び込むが、映画全体を押し上げるほどではない。
監督および脚本担当はフランソワ・ユザンなる人物だが、才気も個性もさほど感じられない。クライマックスのバトルシーンはそこそこ盛り上がるものの、やはりハリウッド作品などと比べると見劣りするのは否めない。ラストに用意されているオチも、大して効果的ではない。
とはいえ、祖父役としてジャン・レノが出ているのは注目すべき点だ。彼もいつの間にか70歳を超えていて、劇中では認知症に罹患したキャラクターだが、中世にタイムスリップした時には健常者になって活躍するのだから、けっこう感慨深い。スザンヌ・クレマンにリサ・ド・クート・テシェイラ、アリゼ・クニー、ラファエル・ロマンといったその他のキャストは馴染みはないが、皆破綻のない仕事ぶりだ。