閑猫堂

hima-neko-dou ときどきのお知らせと猫の話など

クーポンの謎

2011-09-18 14:30:11 | 

とあるクーポンの貼り付け台紙を眺めていたら、
真ん中の文字に目がとまった。

「クーポンのコピーでのご応募は無効とさせていただきます」

コピーで応募・・
する人がいるのか!という驚きと、
その手があったか!という驚きが、半分ずつ。


S市の商店街で、お買い物をするとくれるシールが、
あるときからポイントカードに切り替わった。
S市に数年遅れて、隣のM町でも
ポイントカードが導入された・・のを記憶しているが、
ふと気づいたら、いつのまにか元のシールに戻っていた。

地元で買い物をする人の多くがお年寄りなので、
ポイントカードが何であるか理解されない。
たまった気がしないし、使い方もわからない。
ということだろうかと思ったら、理由は他にもあったようで。

店員さんいわく、
「シール貼るの好きな人がいてねェ・・」

M町のシールは、一度の買い物でもらう枚数が多い。
店の人はいちいち数えて渡さねばならないし、もらったほうは
500枚あつめて、きちんと台紙に貼らないと使えない。
しかも自分で裏に糊をつけて貼るので、面倒なのだ。
それがよかった、という。
シール貼りがおばあちゃんの大事な日課だったのに!
という抗議の声が、予想外に多かったらしい。

文明が進歩し、どんどん便利になるのは良い。
カード化し、デジタル化し、簡単になり、力がいらなくなり、
時間も手間もかからなく なっていく。それは良いけれど、
「手間がいらない」=「ヒトに優しい」とは限らない。

Three essentials for happiness;
something to do,
someone to love,
something to hope for.

「すること」がなくなり、「こうだったらなあ」という望みもすべて
満たされてしまったら、ヒトは幸福の3分の2を奪われたことになる。



で、本日の「謎」は何かといいますと、

冒頭のクーポンはコーヒーについているもので、
うちは消費量が少ないから、何か景品をもらおうと思ったら
3年分くらいためないと駄目だろう。
だけど、その会社には全国から大量に送られてくるに違いない。
それ、1枚1枚数えたり、コピーじゃないか確かめたりしている人って、
ほんとうにいるんだろうか?

と、思っただけ。

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毒りんごの謎

2011-09-13 13:43:29 | 

グリムの白雪姫の話。
悪いお妃がこしらえた毒りんごは半分が赤く、半分が白く、
赤いほうにだけ毒が仕込んである。

この「半分白」という表現が、どうもひっかかっていた。
白いりんごって、見たことがない。
熟していないりんごは、たしかに赤くはないが、
それは日本語では「青い」と言うのではないかしら。

さらに、その「半分」というのが、「縦に半分」だと、
なぜかわたしは子どもの頃から思い込んでいた。
お妃が「2つに切って一方を」食べさせるせいもある。
りんごを2つに切るといったら、ふつうは縦ですよね。
しかし、左右に紅白染め分けのりんごというのは、
想像すると、いささか変である。
りんごに見えない。

ドイツ語の原書が読めないため、英訳本を仔細に読む。
すると、英文でもwhiteとredと書いてある。
白くて頬の赤いりんご、と。

(グリムを読むことになるならドイツ語をやっておくべきだった。
ルパンと三銃士が読めればとフランス語をとったのが大間違いで、
結局、ぜんぜん読めるようになりませんでしたし・・)

白雪姫の「雪のように白く、血のように赤い」に
かさねたwhiteとredであることはわかる。
しかし、この場合の白は、「白という色」よりも、
「色が薄い」「色づいていない」と解釈すべきだろう。
日本語で単純に「赤と白」と言ってしまうと微妙に誤解が生じる。

りんごの赤く色づいたところと、未熟な色の薄いところ。
って、ふつうに考えれば、上と下ですね。
すると、お妃は、横半分に切ったんだろうか。
想像すると、それも、なんだか変だけど。

<追記>
このつづきは →こちらです。


それにしても、仔細に読めば読むほど、
このお妃の執念の凄まじさには驚く。
変装して、7つの山を越えて、はるばる殺しにやってくる。
コムスメ相手に、3度も。
ほとんど「ターミネーター」並みである。
この人に比べれば、王子さまなんて、ぜんぜん影が薄い。
白雪姫の物語が時代を超えて語り継がれてきたのは、
やっぱり、悪役がいいから、でしょうね。

英国版アーサー・ラッカムの絵は小人も怖いのよ;

 

以下は、おまけ。

<白雪姫と7人の宇宙人>

白雪姫のゆめは、スターになることでした。
だいすきなポップス歌手のハンク・ハンクみたいに、
ヒットチャート1位になりたいと思っていました。

白雪姫は、きれいな声をしていました。
おどりもじょうずでした。じぶんで歌をつくることもできました。
もんだいは、ただひとつ――いじわるなまま母でした。

まま母は、むかし、ゆうめいなスターでした。
ワルイ・オキサキというなまえで、人気まじょバンドの
リードボーカルをやっていました。
でも、いまは声もしゃがれてしまい、もうスターではありません。
それで、白雪姫のことをひどくねたんでいたのです。


・・というのは、Laurence Anholtという人の書いた
昔話パロディ集で、10年以上前に頼まれて訳したものの、
刊行に至らなかった幻の1冊。
このあと、白雪姫は、まま母から逃げ出して、
<ナイトクラブ・宇宙船>の掃除係になるのですが・・。

他にも「おおかみずきんちゃん」とか「ジャックと豆の缶」とか
「はだかじゃない王様」とか、いろいろ変なのが入ってて、
面白いですよ。

 

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マルモットの謎

2011-08-28 11:42:39 | 

どうもグリムにはまると長くなる。
先日も、「ラプンツェル」の件であっちこっち調べまわり、
なんと日本でもこの植物の種を売っている!
というところまでたどりつき(音夢鈴さん、ご教示感謝です)、
それを買ってみようかどうしようかと目下思案中なのですが、
その前には、数日にわたり「マルモット」を調べまわっていたのでした。

いえ、グリム童話に「マルモット」という話はありません。
これは何かというと、以前調べた「あめふらし、またはてんじくねずみ」の
副産物のようなもので、えーと、そこまでの経緯はこちらを・・。

・・すみません、3年も前の記事ですね(笑)。

さて、日本では「てんじくねずみ」より「モルモット」のほうが
通りがいいのですが、この名前がそもそも謎。
英語圏では「モルモット」とはいわず「ギニーピッグ」というのです。
じゃあ、モルモットって何なのか、というと、

じつはマーモット(マルモット)という動物が別にいまして、
その名前が、日本に伝わったとき、どこかで間違って
「てんじくねずみ」と結びついてしまったらしい。
おかげで、本物のマーモットには、和名がないことになってしまった。

(うちにある国語辞典で「てんじくねずみ」をひくと「モルモット」と出る。
「モルモット」をひくと「てんじくねずみの俗称」と出る。
そして、仏和でmarmotteをひいても「モルモット」と出ますが、
「モルモット」=「てんじくねずみ」と思ってるのは日本だけなのね)

じつは、「あめふらし」の正体は「マーモット」ではないか?と、
最初、考えたのでした。
アルプスの山岳地帯に住むヨーロッパマーモットじゃないかと。
ところがこのマーモット、検索していただくとわかりますが、
ねずみの仲間とはいえ、大きさは「猫くらい」あるのです。
こんなのが頭にのっかってたら、肩こっちゃう、という以前に、
お姫さま、気づかないほうが絶対おかしいって・・。

ということで、グリムのほうは、これではない、と。
そうすると、ベートーヴェンの「モルモット」という歌曲は
いったい何を歌ったものなのか、という、あらたな疑問が生じました。
その答えを、書くつもりでいて、3年たってしまったのですが、
先日、在庫整理のおりに、押入れの奥から出てきた「玉手箱」の中で
昭和20年代の古い楽譜を見つけたわけ。

 

はい、これです。
タイトルは「旅芸人」(Marmotte)
作詞はゲーテ、訳詞は堀内敬三。

♪ 越え行く山川 果てし無き道を
  けもの引き連れて さすらう此の身
  身すぎ世すぎの 浮世の旅路
  身すぎ世すぎの 浮世の旅路

(最近の訳詞では、ほとんどがこれを「旅の行商人」としており、
モルモットもマーモットも出てこないので、
よけい謎になってしまうのですが・・)

ポイントは上の歌詞の「けもの引き連れて」。
原詩はドイツ語、しかし、リフレインだけフランス語で、

♪ Avec que si, avec que la,
  Avec que la marmotte.

18世紀、フランスのサヴォア地方の旅芸人は、
野生のマーモットを飼いならして芸を仕込み、
手回し琴を奏でながら町々をまわったという・・
つまり、日本でいえば「猿まわし」みたいなものではないか。

ということで、たどりついたのが、こちら

宮廷御用画家フランソワ=ユベール・ドルーエの描いた
「マルモット使いの旅芸人(の扮装をした貴族の子どもたち)」。
左端で「立ってる」マルモットが可愛いですね。
(ただし、クライアントの坊ちゃん方より目立たぬよう
ひかえめに描いてある・・)
ゲーテが詩に書き、ベートーヴェンが曲をつけたのは、
まさにこの「旅芸人」だった、ということが、
これでやっと納得できたのでした。

「あめふらし」から「マルモット」に行き着いて、
それで何なんだ?・・というと・・べつに何でもありません。
こういう「はるばる・うろうろ・ひとり旅」が好きな閑猫です。
さあ、すっきりしたから、お仕事しよう。
(と言いつつ、こんどは「山姥」にはまっていたり・・笑)

 

<追記>

「旅芸人」の曲(動画)はこちら↓

Lied des Marmottenbuben

タイトルのMarmottenbubenは、辞書にないけれど、
bubenはドイツ語で「少年(たち)」だそうだから、
「マルモット使いの少年の唄」で、いいような気がする。
最初からそういう邦題なら、悩まなくて済んだのに!

だけど、bubenで画像検索すると太鼓の写真ばかり出るのは
いったいどういうわけでしょう?(あらたな謎・・笑) 

 

<また追記>

もうひとつ、曲の動画追加。

's Lumbegsindel - La Marmotte

なんだか六大さんの絵みたいですね。

 

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大安の謎

2010-12-28 08:29:40 | 

クリスマスイブにスーパーに行ったら、
店内放送で「本日は大安です」と言っていた。

大安。ああそう。
と軽く聞き流し、ちょっとたってから、はて?と振り返る。
「大安です」のあとに「お買い忘れのございませんよう」と
何かつづいたように聞こえたので。

大安の日に、スーパーで買うものって、何だろうか。
思いついたのは、祝儀袋・・くらいだが、
当日に祝い事などがあれば、もっと前からわかっているから、
「大安です」と言われて「ああ、そうそう」と
思い出して祝儀袋を買う、ということはないだろう。

大安の日には必ずこんにゃくを煮て食べるとか、
四辻に三角の厚あげをおそなえするとか、
地域的にそういう風習でもあるのだろうか。
昔からそういう風習をきちんと伝承している人々にとっては、
クリスマスイブというのは特に何でもなく、
「そうそう、きょうは大安だったわね」と
こんにゃく(だか何だか)を買って帰るのだろうか。

いや、そういう人がいたってもちろんいいけれど、
ひとりやふたりのために店内放送をするとも思えないし。
「クリスマスイブ<大安」派の人々がこの町には多いのか。
奇妙である。
(結局そのあと同じ放送は聞けなかったので、真相は謎のまま)

<追記>
そしてなんと10年後の解決篇が→こちら


クリスマスイブに、アイロンが壊れた。
買ってまだ2年にもならないコードレス式アイロンである。
台が充電器になっているのだが、片づけるため台ごと持ち上げたら
上に不完全にのっていたアイロンがするりとすべり、
あっというまに床に落ちて割れてしまったのである。
中には意外なほど細い電線が入っており、はずれただけでなく
接合部分のプラスティックがいくつか欠けて、もうどうにもならない。

アイロンを落として割るなんて、昔だったら考えられない。
重い鉄製品だったら、落とさないようにしっかり持つだろう。
万一落としても(床または足にひびが入ること必至だが)
こんなにあっさり壊れたりはしないだろう。
あまりにもアイロンらしくない最期に、呆然とする。
大安だったのに。どうして。

 

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モンブランの謎

2010-09-13 08:55:10 | 

コロッケ、目玉焼きにつづいて、
こんどは「巨大モンブラン」の登場です。

(じつはその間に「巨大芋煮会」もあり、他にも何やら
ひとつふたつありましたが、さほど興味をひかれず。
しかし、最近、この種のニュースがやたらと目につくような気が。
こういうのを「カラーバス効果」っていうんだろうか?)

パティシエ4人が4日がかりでこしらえたというモンブラン。
報道によれば、
栗1キロ、卵150個、小麦粉6.3キロ、生クリーム20リットル。
高さ70センチで、約1000人分だとか。
いかがです?
(と、おもに西のほうを向いて言っておりますが…笑)

ふうむ。
しばらく考えて、わたしはパスだな、と。
なぜかって、栗1キロです。
(この数字、間違いじゃないですよね?)
1キロ=1000グラム。つまり1000人で分けたら、
おひとりさま1グラム。

それに。これはイベントではなく、某ホテルの
バイキングレストランにて供されるという話ですが、
そうすると後半の500人くらいは「スポンジだけ」しか
いただけないのではないかしら。
(いつもそこのところにこだわる閑猫)
大きければ大きいほどいいというものじゃないですよね、
ことスイーツに関しては。

と言いつつ、さらにしつこく調べてみたら、
実際にはパティシエが一人分ずつお皿に取り分けてから
栗クリームを絞ってくれるんだそうで。

あ、そう。
(安心とガッカリが相殺されて面白くない閑猫)

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純金の謎

2010-09-03 22:35:47 | 

「純金カステラ」
…という文字が気になる。
みやげ物店の看板である。

すぐに思い浮かぶのは、カステラの形をした金塊。
中まで純金。かたくて、ずっしり重い。
ごていねいに桐の箱におさまっている。
紫色の羽二重の風呂敷に包んであったりする。
しかし、よく考えてみると、それは「カステラ」ではない。

イメージを修正する。
金ぴかの紙で個別包装したカステラ。
あるいは金塊を模したパッケージ入りのカステラ。
観光みやげには、どちらもありそうだけれど、
それで「純金」と称しているなら、がっかりだ。

イメージを方向転換する。
表面に金箔をちらちらっと振りかけたカステラ。
うーん、まあ、そのあたりが妥当かな。
金箔入りのお茶とか日本酒とかもあることだし、
おみやげにもらっても、いちおう納得できそう。
しかし、フリカケは本当に純金かもしれないけれど、
カステラ全体からみれば誤差の範囲の微量であり、
嘘ではないが、微妙に不正表示っぽい。

「そんなに気になるなら買ってみれば」とMに言われた。
いえ、べつに食べたいわけじゃないので。
買うまでもなく、店頭で一瞥すれば謎はとける。
しかし、その看板の下に、店はない。
「この先42キロ」と書いてある。
そんな離れた場所に看板だけ立っているのも謎といえば謎。


ついでに…

メロンパンにメロンクリームが入っているのは邪道。
メロン最中(もなか、ですよ。さいちゅう、ではない)が
「皮をちょっとメロン模様にしてあるだけ」なのは詐欺。
しかも「メロン」と書いてなきゃ絶対メロンに見えないし。
もみじまんじゅうも「形だけもみじ」だけど、それは可。
もみじのてんぷら(って、お菓子です、関西のほうの)は
まさか本当の葉っぱだとは思わなかったので、びっくり五重丸。

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目玉焼きの謎

2010-08-17 10:14:11 | 

少し前に「巨大コロッケ」の話を書いたところ、
今度は別の町に「巨大目玉焼き」が出現した。

直径約4メートル。
使われた卵は1200個。
焼いたのは道路舗装工事用のガスバーナー。

新聞の写真を見て、うーん? と首をかしげる。
巨大な円形の白身の中に、巨大な黄身が、ふたつ。
黄色のサングラスをかけた月光仮面みたいである。

つまり、いくら大きなフライパンを用意しても、
1200個の卵をポンポンと割り落としたのでは、
「目玉焼きがいっぱい」にしかならない。
「巨大目玉」にするには、黄身と白身をわけて
別々に流し込まなきゃならないわけですね。

たしかに巨大ではある。
が、そのわりにはインパクトがない。
なぜかと、しばらく考えて、気づく。

「黄身ふたつ」が変なのではないか。

そもそも卵を割り落としたとき、
「白身のまんなかに黄身」だからこそ「目玉」と呼ばれる。
それは卵というひとつの完全生命体の持つかたちであり、
そこから発するインパクトなのだ。
まれに黄身がふたつ入った卵もあることはあるが、
あくまでもそれは異例のこと。
目玉をふたつ作りたかったら、卵を2個割らねばならない。

このイベントの場合、別々に流し込む方式はやむをえないとして、
直径2メートルのフライパンを2つくっつけて
同時に2つ作れば、もっとそれらしく出来たような気もする。
(ですが、そうすると「直径4メートル」のギネス記録申請が
あやうくなってしまうのか…)

もうひとつ。
これだと、どう切り分けたって絶対に
「黄身だけ」か「白身だけ」になるでしょう。
好きな人は白身だけでも召し上がるかもしれないが、
わたしはちょっとご遠慮したい。

個人的には「直径4メートルのフライパンに敷き詰められた
1200個の目玉焼き」のほうが見てみたいと思う。
いや、さらに個人的なことを言ってしまうなら、
目玉焼きは黄身が半熟のほうが美味しいし、
おうちでこっそり作って食べたいものでありますね。

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消えたケータイの謎

2010-07-25 13:14:06 | 

Mにかかってきた知らない人からの電話。

「カラスは光る物が好きって聞きましたけど本当ですか?」

事情はこうです。
その人は、夕方、自宅の庭に「桃と携帯」をちょっと置いて、
うっかりそのまま忘れてしまった。
翌朝、桃はカラスにさんざんつつかれた跡があり、
携帯は消え失せていた。

ゴールドだかシルバーだかの携帯で、
ストラップにもキラキラの飾りがついていたので、
もしかして、カラスがくわえていったのではないか…と。

カラスが光る物を盗んで隠す、という話、
わたしもどこかで聞いたような、と思ったら、
『はるかなるわがラスカル』のエピソードにありました。
北米ウィスコンシン州に住むカラスのポー君ですね。
あらいぐまのラスカルは人気アニメにもなったので、
カラスがコインや指輪をためこんでいる図が
当時の子どもたちの頭にしみこんで定着したのでしょう。

カポーティの『ローラ』は、著者がシチリアで飼っていたカラスの話。
やはり指輪泥棒の常習犯で、車のキーや入れ歯や万年筆、
それに大量のリラ紙幣まで隠していたことが書かれています。
そうそう、エラリー・クイーンのミステリ『ニッポン樫鳥の謎』も、
これはカラスじゃなくルリカケスですが、
光り物を好む鳥の習性が事件と関連して出てきますね。

しかし、調べてみると、どうも日本のカラスは、
(北米やヨーロッパのカラスとは種類が違うせいか)
あまりそういうことはしていないみたいなのです。
Mも、カラスの「巣」はいくつも見ているけれど、
都会のカラスで巣材に金属チェーンが混じっていた以外、
光り物があるのは見たことがないと。

ただ、もともとカラスには、木の洞とか屋根の隙間などに
余った餌を貯めておくという習性があり、
食べ物だけでなく、ビールの王冠やゴルフボールなんかも
隠していることは日本でもよくあるらしいです。
それと、知能が高いのでいろんな物に興味を持ち、
調べてみるためにくわえて行く、ということもあるらしい。
もしかしたら携帯の形をしたチョコレートかもしれないし(笑

「うーん、とりあえず携帯に電話してみたら」
「それが、マナーモードにしてあって…」

 突然ぶるぶると震えだす携帯。
 びくっとして飛び下がり、首をかしげて見つめるカラス。

「朝、目覚ましが鳴るようにはなってるんですけど」

 突然鳴り響く目覚ましメロディ。
 なんだなんだ!? 寝ぼけまなこでうろたえるカラス。

目覚ましが鳴る頃を見計らって庭に出て耳をすます、
それしかないでしょうね…ということで終わったようですが、
はて、その後、どうなったでしょうか。
本当にカラスが持ってって隠したとしたら、それはたぶん
地上15メートル以上の高い場所ではないかと…。
無事に取り戻せることを祈っています。

(じつは、取り戻した後のことが知りたい。
怪しい通話履歴が残っていたり、
カラスの子がピースサインで写真にうつっていたり、
してませんでした?)

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ホースの謎

2010-06-14 14:33:28 | 

梅雨入り。
3匹のカメさんたち元気。
今年は、冬眠から目覚めた直後に「冬並み」の気温に戻り、
大丈夫かなあと心配しましたが、大丈夫でした。

猫にくらべると、爬虫類はあまり面白くありません。
生物としてのコンセプトが人間と違いすぎるからでしょう。
反応が単純だし、鳴かないし、なでても喜ばないし。
幸せなのか、不幸せなのか、見ていてもよくわからない。
死なないように気をつけて飼っているだけ。
お互いにそれでいいんだろうかと、いつも考えます。

カメにもいちおう学習能力はあるようで、
学習したことは冬眠中も保存されるようです。
もう長年飼っているので、だいぶかしこくなりました。
ヒトの顔を見ると「ゴハン、ゴハンくれ」と寄ってきます。
(猫がのぞいても、同じように寄っていくところをみると、
ヒトと猫の区別はできていないのかも…)
さらに、「ヒトが来る=ゴハンをくれる」を短縮して
「ヒト=ゴハン」と覚えてしまっているので、
指を差し出せば、その指にぱくりと噛みつきます。
餌を落としてやっても、まだ指のほうばかり見つめている。
そうじゃない、ってこともいつかは学習できるのでしょうか。

カメの水槽3つの水換え、というのは、
家事の中では「重労働」に分類されます。
(重量的には、廃品回収に出す古新聞の束とか、
アトリエの魚の水槽のほうがはるかに重いのですが、
そっちは今のところわたしの管轄外なので…笑)

「どうしました?」
「えーあのカメの水を換えてたら腰が…」

という事態は避けたいので、いつも慎重にやります。
動きののろいカメなのに、逃げるときはとても敏捷で、
重い物を慎重に抱えつつ、敏捷なちっこいものに対応する、
というきわめて高度な複合的動作が要求されます。

で、タイトルの「ホースの謎」は何かというと、
家の外の水道についているホースがですね、
水換えには2メートルもあればじゅうぶんなんだけど、
10メートルを超える長~いホースがついていて、
使うたびに必ずからまってぐしゃぐしゃになってしまう。
んもう、ホースって、どうしていつもこうなんだろ!
と、まあ、それだけ。

余談ですが、カメの甲羅につく苔を洗い落とすには、
昔ながらの「カメノコタワシ」が一番で、
じつに素晴らしいネーミングです。

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ウクレレ男の法則

2010-04-26 08:05:49 | 

時鳥さんから「ウクレレ男」を拝借して、
包丁男の話をつづけます。
なるほど、持つものは凶器とは限らないか…。

お天気の日にいつも傘をさしているおじさんがいたら、
それはきっと「傘おじさん」だ。
前に住んでいた町には、野良猫に餌をやる有名なおじさんがいて、
近所ではみんな「猫おじさん」と呼んでいた。
あるていど親しみが感じられれば「○○おじさん」と呼び、
危険あるいは不気味なら「○○男」と呼び捨てにするが、
どちらも同じものだ。

共通するのは、非日常性、だろうか。
ふつう持たないようなものを持っている。
ふつうしないようなことをしている。
だから、目立つ。気になる。

ヒトは、群れ社会をつくる動物なので、
気になることを見聞きすると、仲間に伝えようとする習性がある。
それが危険なものなら警戒する必要があるし、
良いものならさっそく真似したり利用したりする必要がある。
そうした情報を、より多くの仲間とやりとりするために、
ヒトは言語という便利なものを持っている。

現場にいるなら「ほらほら、あれ!」と指させばすむが、
現場にいない人にまで伝えるには、対象を呼ぶ「名」が必要だ。
とりあえず、目立つ特徴と属性を組み合わせておくのが
てっとりばやくわかりやすいだろう。
こうして「ウクレレ男」や「傘おじさん」が誕生する。
(ご本人が先に名乗らなかったら、某有名歌手だって
「ムーンウォーク男」と呼ばれていた可能性もある…かな?)

〈例〉晴れた日にウクレレを抱えて商店街を歩いていた
某町在住の甲田乙郎さん(自営業・男性)は、
あっというまに「ウクレレ男」になってしまった。

ウクレレ自体は凶器でも怪しいものでもないと思うけれど、
何か「文脈からはずれた」要素があるのだろうか。
乙郎さんが隣の人にウクレレをぽんと手渡せば、
こんどはその人が「ウクレレ男」を引き継ぐのか。

場所はどうだろう。
そこが駅前商店街ではなくハワイの砂浜だったら、
ウクレレを持っていても絶対「ウクレレ男」にならないのか。

そういう問題ではなさそうだ。
「物」と「場所」を選ぶのは、あくまでも「人」なのだ。
つまり、「その物」と「その場所」をあえて選択した乙郎さんの
「意思」の方向が、すべてのモトなのである。

群れの中で、他と異なる方向に動く個体に、周囲は注目する。
警戒して排除すべきなのか、賞賛して真似すべきなのか、
少しでも早く見極めて判断しないと落ち着かないからだ。
そのために名をつけ、注意を喚起し、情報を交換し合う。
(「有名人」というのは、つまりそういうことですね)

唐突だが「ナルニア国物語」を思い出す。
セントール(ケンタウロス)は半分馬だが、
頭を含む上半分が人であるゆえに人間の味方だった。
しかし、頭が牛になっている人(お名前忘れました)は
残りの半分も含めて敵の魔女側なのだ。
「ウクレレ男」も頭がウクレレになっている。
乙郎さんというヒトは、ウクレレというモノを
コントロールしきれず、主従が逆転している。

もちろんそれだけで敵と決めつけるわけではないけれど、
自分の手にしたモノに支配されているようなヒトが、
群れの仲間をより良い方向に導くとは信じがたい
(と、まあ、現時点ではそう判断された)。
そういう意味では「狼男」と同じくくりでも間違っていない。

人と、物と、場所。
この3つのバランスが、ある一定の基準を超えたとき、
(あるいは「はずれた」とき)
何らかの化学反応が起こり、ウクレレ男が発生する
…のかもしれない。
すべては言葉のワンダーランドで起こる不思議な出来事。


(というわけで、「アリス・イン・ワンダーランド」を
観に行こうと思うのですが、2D字幕版の上映館というのが
とんでもなく遠いのであります。
3Dで観ると酔いそうで、帰りが心配だ…)

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