チエちゃんたちの年代で、ソーセージといえば、この魚肉ソーセージを思い浮かべる人も多いだろう。
本物のソーセージなど食べたことがなかったから、ソーセージとはこういうものだと思っていた。
あの頃、冷蔵庫のなかったチエちゃん家では、保存のきく便利な食物であっただろうと思う。
おじいちゃんが作るカレーには、絞めた鶏のお肉といっしょに銀杏切りにしたこの魚肉ソーセージが入っていたし、
オムライスの中のチキンライスもどきにも鶏肉代わりとして入っていた。チャーハンの焼き豚代わりにも、みじん切りにしたそれが入っていた。
もちろん、お弁当のおかずにも、フライパンで両面を焼いた魚肉ソーセージが入っていた。
おやつに丸ごと1本もらえた時には、それはもう、うれしくて、弟とゆっくりゆっくり味わって食べたものだ。
ヒロシは買い物についてくると、この魚肉ソーセージをカゴに入れる。
そして「これさぁ、塩コショウして焼いて食うと、うまいんだよなあ」と、必ず言うのだ。
かくして、休日の中年夫婦の昼餉は、焼き魚肉ソーセージと相成った。