チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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母の電話

2009年09月15日 | チエの玉手箱
 少し耳の遠くなった母からの電話は、彼女の身の回りの出来事を一方的に話す。
私がうんうんと相槌を打つのも、聞こえているのかどうか疑問だ。
 それでも、娘にだけ話せる愚痴もあるのだろうと、聞き役に回る。
大概は、金曜日か土曜日の夜の早い時間に掛けてくるので、私もなるべく付き合ってあげることにしている。
もう、父は寝てしまったのだという。へんな所で、親子って似るものだなあと思う。(祖父も早寝をする人だった。)

 前回の電話は、不動さまのヨッちゃんが亡くなり、東京で暮らす息子と娘たちが帰ってきて、大層立派な葬儀を出したのだと言う。

 「不動さまのヨッちゃん」というのは、同じの不動様の近くに住居を構えるおばあちゃんで、ご主人を亡くされてからずっと一人暮らしをしている人でした。私の祖母と同じ年齢ですから、もう90歳を過ぎていたでしょう。
このおばあちゃんはお料理が得意で、若い頃から、で祝儀や不祝儀があると、まかないのお手伝いを取り仕切る役目の人でした。

「じゃあ、これから何かあったら、困るね」と、大きな声の私。
「いや、それどころじゃないよ。もうここは、年寄りばかりで、お手伝いもままならない。
私たちに何かあったら、ヨッちゃんみたいに立派な葬式じゃなくていいから、ご近所の人に教えてもらって人並みにやっておくれ。葬式代くらいは貯めておいたから。」
「はい、はい、分かりましたよ。」

 それから、通院している病院のことやら、トシ子叔母さんは足腰が痛いと言いながら今年は茄子を作ったこと、弟が昇任試験の勉強で忙しく、この夏には墓参りに来なかったこと、そんなことを30分以上も話し、満足したのか、ようやく電話は切れた。