シネマ見どころ

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「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(2012年アメリカ)

2013年02月10日 | 映画の感想・批評
 愛称をパイ(円周率)と自ら名付けたインド人の数奇な運命を告白した物語という設定になっている。予告編ですっかり有名となった虎と太平洋を漂流するインドの少年の冒険譚はCGの独壇場であって、巨大なシロナガスクジラが海中から海面を飛び出し再び海深く没して行くシーンの何と幽玄的で美しいことか。3D嫌いのぼくは字幕2D方式でみたのだけれど、このシーンだけは3Dで見る価値があるように思う。
 主人公の父親はインドで動物園を経営しているが、公的な援助が打ち切られることになったらしく、採算が合わないのでカナダに一家全員が移住することになり、動物たちも日本の貨物船に積んでカナダへ輸送し、向こうで売るという。へえ、何でインドで売らないのだろうと、そんなことを考えているうちに貨物船がマリアナ海溝の付近で嵐のために難破し沈没する。主人公の少年は救命ボートに乗って命拾いするのだが、何とその船には足を骨折したシマウマと、ハイエナ、オランウータンが同船していたのである。ハイエナがシマウマを襲い、続いてオランウータンを殺し、少年も狙われる。あわやというところで、シートに覆われた船底から虎が忽然として姿を現しハイエナを一撃の下に倒してしまう。爾来、少年は虎と睨みあったまま水平線しか見えない太平洋の海原をただひたすら漂い続けるのである。
 動物たちの演技はかつてのディズニー映画とは違ってCGを活用した虚実ないまぜのトリックだが、この映画の結末はきわめて現実主義的である。なるほどと納得してしまう一方で、インド人もまた白髪三千丈の国と同じく壮大なホラを吹くのだと感心したのであった。(ken)

原題:Life of Pi
監督:アン・リー
脚本:デヴィッド・マギー、ディーン・ジョーガリス
撮影:ティム・スクワイアズ
出演:スラージ・シャルマ、イルファン・カーン、レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデュ