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東ベルリンから来た女(2012年ドイツ映画)

2013年02月21日 | 映画の感想・批評
 第二次大戦敗戦後ドイツは東西に分裂し、東ドイツの首都ベルリンも東西に分裂したが、西ベルリンは西ドイツ領ではなく、米英仏3カ国の信託統治領となった。
 1961年から1975年にかけて建設されたベルリンの壁は1989年に崩壊したが、この作品は崩壊の9年前、1980年夏の旧東ドイツを舞台に展開される。
 女医のバルバラは東ベルリンの大病院に勤務していたが、恋人ヨルクが暮らす西ベルリンへの移住申請を却下され、バルト海沿岸の田舎町の病院に左遷される。秘密警察(シュタージ)の監視の下で、新しい病院の職員たちと距離を置くバルバラに、同僚のアンドレは「孤立するな」と忠告する。
 黙々とアパートと病院を往復するバルバラだが、時折恋人に逢うためにこっそりと出かけ“脱出”計画を相談する。帰宅した彼女を待っていたのは、シュタージによる家宅捜査と屈辱的な身体検査だった。
 息が詰まるような日々が過ぎ、ついにその日が来た。その時彼女が選択した決断は感動的な犠牲と思われがちだが、本当のところはどうだろう。ヨルクに「西へ来たら君は仕事を辞めたらいい」と言われた時から、彼女の“脱出”への思いは揺らいでいたのではないだろうか。東ドイツより整った医療環境での活躍を願っていただろうバルバラは、恋人の言葉に失望したと思う。
 もし彼女がヨルクのもとに行ったとしても、価値観の違いから2人の関係は長続きしなかったのではないかと思う。個人の自由を束縛するという意味では、東ドイツの体制も、ヨルクの女性観も同じだったのかな。(久)

原題:BARUBARA
監督:クリスティアン・ペッツォルト
脚本:クリスティアン・ペッツォルト
撮影:ハンス・フロム
出演:ニーナ・ホス、ロナルト・ツェアフェルト