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「海よりもまだ深く」(2016年 日本映画)

2016年06月01日 | 映画の感想・批評
 離婚に未練たっぷりの元夫を中心に、次の恋に仕事にと動き出している元妻と、その二人の間に生まれた大人しい小学生の息子、夫側の母親と姉が繰り広げる人間ドラマ。是枝監督は「海街diary」の四姉妹物語の次は、家族物語を優しく暖かく作り上げた。ちょっと早いが、次回作はどう来るのか。楽しみだ。
 随分前に文学賞を受賞した小説家の元夫は、今は探偵事務所でうさんくさい調査員をしながら、小説の題材を集める日々。ギャンブル好きで生活費を工面出来ず後輩から借金状態。元妻は働きながら金持ち男性と結婚を考え、息子を所謂「出来る子」に育てようとしている。母親はつい最近夫を亡くし、年金で団地に一人住まい。ご近所付き合いも行動派。姉はそんな兄や母に小言を言いながらも、子供達を育て、働いて、場合によっては、良きご意見番として、存在感を示す。ざっと書いただけだが、どこにでもありそうな「家族」がそこに居た。
 この映画は、暗い残忍な事件が多い今の世の中に、もがき悩みながらも生きていこうとする人にスポットを当て、人の「暖かさ」を映し出している。思い通りにいかないことばかりだが、卑屈にはならず、常に前向きに生きる気持ちを持ち続けることが大事と優しく教えてくれる。ちょっと道を外れると、誰かが注意する。修正する。その繰り返しで大人になっていくのかなあ・・・。決して、捨てた世の中じゃないと思いたい。
 でも、でもですね、それは十分、頭では分かっているつもりなのですが、現実的な問題になると、そう行かないことも多くて・・・。何故なのか。人間って不思議。家族って不思議。そう、海よりももっともっともっと深いものなのでしょうね。
(kenya)

原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
撮影: 山崎裕
音楽:ハナレグミ
製作: 石原隆、川城和実、藤原次彦、依田巽
出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、吉澤太陽、橋爪功、樹木希林