「白バラの祈り ゾフィー・ショル、最後の日々」のマルク・ローテムント監督作品ということで期待していたが、原作者のサリヤ・カハヴァッテの実話を映画化し、期待通りの心温まる作品となっている。
父の国スリランカを旅した際にホテルの魅力に感動し、「5つ星ホテルで働く」ことを夢見ていたサリーだったが、先天性の病気で95%の視力を失ってしまう。それでも夢を諦めきれないサリーは視力障害を隠して一流ホテルに応募し、見習い研修生に合格する。しかし実際に研修が始まると、次々と問題がおきて来る。
サリーの5%の視力を、実際の見え方はどうなのかは観客の方で想像するしかないが、画面ではカメラのピントをぼかすことで表現している。普通に見えているものの色や形がぼやけて、判別できないもどかしさを共有しながら、自分だったらサリーのように現実に負けないで夢を実現しようと行動できるだろうかと思わずにはいられない。
一流ホテルの研修内容は、ルーム係、フロント、厨房、バー、レストランなどと多岐に亘っていて、指導官も厳しい目で研修生たちをチェックしていく。サリーはちゃんとやっていいけるのか、見えないことがいつばれるのか、ハラハラドキドキしながら映画に引きこまれていく。
本人の努力はもちろんのこと、明るくて誠実で真面目なサリーを優しく助けてくれる周りの人たちの存在が大きい。中でも、一緒に研修に参加することになったマックスとの友情が、サリーの夢の実現を手助けしてくれる。前夜の酒の匂いと女の残り香をまとって面接に遅刻して来て、本当にやる気があるの?と思いたくなるマックス。けれどもなぜかサリーとは気が合って、さりげなくサリーの様子をうかがいながら彼のピンチを助けてくれる、実はとっても頼もしいナイスガイだったのだ。父親の経営するレストランに研修が終わった後で忍び込み、サリーのためにバーテンダーに必要な知識や技を教えてくれたり、テーブルセッティングの練習に付き合ってくれたり、マックス自身がそれなりの技量をもっていることを伺わせる。サリー1人では叶わなかった夢が仲間たちの支えで実現し、彼を支えた人々も成長していく、そんな人生の素晴らしさを描いている。
真面目で前向きなサリー役のコスティア・ウルマンはエスニックで甘いマスクが魅力のイケメン俳優、一方調子のいいちょっとワルなマックス役のヤコブ・マチェンツも数々の受賞歴に輝く若手俳優と、ダニエル・ブリュール以来注目したい俳優に出会えたドイツ映画だった。(久)
原題:Mein Blind Date mit dem Leben
監督:マルク・ローテムント
脚本:オリバー・ツィーゲンバルク
原作:サリヤ・カハヴァッテ「MEIN BLIND DATE MIT DEM LEBEN」
撮影:ベルンハルト・ヤスパー
出演:コスティア・ウルマン、ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、ヨハン・フォン・ビューロー
父の国スリランカを旅した際にホテルの魅力に感動し、「5つ星ホテルで働く」ことを夢見ていたサリーだったが、先天性の病気で95%の視力を失ってしまう。それでも夢を諦めきれないサリーは視力障害を隠して一流ホテルに応募し、見習い研修生に合格する。しかし実際に研修が始まると、次々と問題がおきて来る。
サリーの5%の視力を、実際の見え方はどうなのかは観客の方で想像するしかないが、画面ではカメラのピントをぼかすことで表現している。普通に見えているものの色や形がぼやけて、判別できないもどかしさを共有しながら、自分だったらサリーのように現実に負けないで夢を実現しようと行動できるだろうかと思わずにはいられない。
一流ホテルの研修内容は、ルーム係、フロント、厨房、バー、レストランなどと多岐に亘っていて、指導官も厳しい目で研修生たちをチェックしていく。サリーはちゃんとやっていいけるのか、見えないことがいつばれるのか、ハラハラドキドキしながら映画に引きこまれていく。
本人の努力はもちろんのこと、明るくて誠実で真面目なサリーを優しく助けてくれる周りの人たちの存在が大きい。中でも、一緒に研修に参加することになったマックスとの友情が、サリーの夢の実現を手助けしてくれる。前夜の酒の匂いと女の残り香をまとって面接に遅刻して来て、本当にやる気があるの?と思いたくなるマックス。けれどもなぜかサリーとは気が合って、さりげなくサリーの様子をうかがいながら彼のピンチを助けてくれる、実はとっても頼もしいナイスガイだったのだ。父親の経営するレストランに研修が終わった後で忍び込み、サリーのためにバーテンダーに必要な知識や技を教えてくれたり、テーブルセッティングの練習に付き合ってくれたり、マックス自身がそれなりの技量をもっていることを伺わせる。サリー1人では叶わなかった夢が仲間たちの支えで実現し、彼を支えた人々も成長していく、そんな人生の素晴らしさを描いている。
真面目で前向きなサリー役のコスティア・ウルマンはエスニックで甘いマスクが魅力のイケメン俳優、一方調子のいいちょっとワルなマックス役のヤコブ・マチェンツも数々の受賞歴に輝く若手俳優と、ダニエル・ブリュール以来注目したい俳優に出会えたドイツ映画だった。(久)
原題:Mein Blind Date mit dem Leben
監督:マルク・ローテムント
脚本:オリバー・ツィーゲンバルク
原作:サリヤ・カハヴァッテ「MEIN BLIND DATE MIT DEM LEBEN」
撮影:ベルンハルト・ヤスパー
出演:コスティア・ウルマン、ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、ヨハン・フォン・ビューロー