監督の前作は「百円の恋」。高い評価を得た作品、DVD鑑賞だったが、安藤サクラの熱演に惹かれた。
そんなわけで、本作にも期待を込めて、公開早々に鑑賞。
滋賀県内の上映館が少なく、公開数日後のイオンシネマ草津は思いのほか観客が多い。
それも中高年のカップルがほとんどという、わたしには珍しいパターン。一緒に行った24歳の息子は希少価値?
大笑いできるほどではないが、クスクス、にやにやさせられるシーンが多く、これも好きな映画の一つになりそう。
中井貴一演ずる古物商「獺屋」がカーラジオから流れる占いに導かれるように、関西を訪れ、とある立派な民家を訪ね、あっさりと蔵を見せてもらうことに。
当主の佐々木蔵之介演ずる陶芸家が「みんな持って行ってくれていい!」
まあ、うさん臭い古物商を勝手に蔵に入れるなんて!屋号からして十分怪しいんやん><
「他家に嫁いだものは蔵に入れてはならない」とン十年前に姑に言われたことがある、ほんのちょっとした「旧家の嫁」の立場の私はまずここで引っかかってしまう。
我が家の蔵にも、まだいいものがあるんかしら・・・・・と妙な期待を抱きつつ。
ところがどっこい、この当主は頼まれ留守番だったのも、意表を突きつつ。
古物商と陶芸家はそれぞれ、著名な鑑定家(近藤正臣)と古物商(芦屋小雁)に騙された経験の持ち主。
意気投合して、陶芸家のアパートでくだを巻きつつ、とんでもない策略を張り巡らし・・・・・
みどころは贋作作りとはいえ、陶芸家の佐々木蔵之介の土をこねるシーンは圧巻。土まで味見してる!
陶芸など一日体験くらいしかないし、そもそも土は練られたものしか出会わないものにとって、「工事現場から採取するん!?」には笑いを禁じ得ないけれど、そこから水を足し、捏ね、空気を抜き、いわゆる粘土に仕上げていく過程は息をのむ場面だった。
ここだけは贋作でなく、「本物」を作り出していると。
後半の見せ場は、千利休の最期の器にかけたであろう思いとうとうと語る古物商、中井貴一の場面。
鑑定士、古物商を演ずる、近藤正臣や芦屋小雁のうさん臭さもたまらない。
学芸員の塚地もさもありなん。
サックスとドラムの音楽もドキドキ感を高めてくれる。ジャズが心地よい。
主題歌も良かった。
名優がそろっているなか、後半のドタバタが感動に水を差してしまう。
そこをちょっと辛抱して、エンドロールは見どころもあったし、ここで席を立ってしまうともったいない。
だから、これから見る方はラストまで辛抱強く!をおすすめします。最後はくすっと笑えるのは間違いないのでね。
10日から23日までビバシネマ彦根でリクエスト上映中。
教訓、「骨とう品には絶対に手を出すな!!!!」
しょせん、物は物!と言ってしまったら実もふたもない?
昨年秋、京都国立博物館の「国宝展」が人気だったのもわかる気がしてきた。
国が本物と称するものを見ることで、ちょっと不安を解消しようという目論見?
それは言い過ぎ?
良いものを見分けられる力は、本物にいかにたくさん触れるかであり、そして時には偽物とも接点を持つことも大事かと。
鑑定書うんぬんよりも、目を磨く!これこそが骨董に限らず、映画でも大事な事なのかな。
自分がいいと信じるモノやコトにお金をだし、これは良かったのだと自分を信じることで、目も心も養われる。
と思うことにしよう。(アロママ)
監督:武正晴
脚本:足立紳、今井雅子
撮影:西村博光
出演:中井貴一、佐々木蔵之介、近藤正臣、芦屋小雁、寺田農