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シネマ見どころ

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「ラストレター」(2020年日本映画)

2020年03月11日 | 映画の感想、批評
 裕里(松たか子)の姉が亡くなった。その姉宛てに届いた同窓会に、姉が亡くなったことを伝えに行った裕里が姉に間違われ、言い出せないまま(そんなことあるか?とも思ったが)に、初恋の人と再会し、手紙でのやり取りが始まるところから映画が始まる。その手紙がひょんなことから、行き違いになり、出会う筈が無かった人々を繋げていく物語である。
 SNSが浸透し、手紙を書くこと自体が少なくなり(というか「私は無い・・・」)、企業間では年賀状を廃止するケースも出てきた時代に、本作品では、手紙(しかもラブレダー)が、時間を超えて、世代を超えて、繋がる。面と向かっては言えないこと、その時には言えなかったことを、手紙に綴る。あの時はそう想っていたのか。今もそう想っているのか。映画ならではの時間軸を自由に行き来して、「人」を照らし出していく。同じ時間を生きてきて、これ程、違う人生になっていくのか。手紙をきっかけとして、その人その人が生きてきた時間を包み込む「懐」のようなものを感じた。広瀬すずと森七菜は、一人二役となっているが、広瀬すずに至っては、一人三役(?)とも取れる幅の広さだった。雑誌で読んだが、監督は、劇中に出てくる『美咲』という小説も、映画の中では、その中身までは披露されないが、実際に書いて撮影に入ったとのこと。監督の作品に込める意気込みとストーリーの奥深さを感じた。
 広瀬すず演じる鮎美の妹役の森七菜に出会えたのは嬉しかった。「天気の子」の声優だそうだが、本作品の撮影時はほとんど無名で、オーディションで選ばれたとのこと。回想シーンの神木隆之介との告白シーンの表情は特に素晴らしかった。叶わない恋心とは分かってはいるものの、気持ちを吐き出さないと自分が潰れてしまう青春時代の切ない感情を表現していた。次回作にも期待したい。また、主題歌を彼女が歌っている。どこかで聞いたことあるなと思わせる懐かしい曲調で、本作品のイメージそのままであった。
 最後に、岩井俊二作品は、前作の「リップヴァンウィンクルの花嫁」に続いて2本しか観ておらず、熱狂的な岩井俊二ファンが多い中、この作品を取り上げることにどこか恐縮しながら、書いた。ファンとしては、豊川悦司と中山美穂の絡みを取り上げるだろうが、私は違う角度で書いてみた。もちろん、二人共、圧巻の演技で、短いながらも存在感たっぷりだった。
(kenya)

監督・脚本・編集:岩井俊二
原作:岩井俊二
撮影:神戸千木
出演:松たか子、広瀬すず、鹿野秀明、森七菜、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一、豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治他