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「罪の声」(2020年日本映画)

2020年11月11日 | 映画の感想・批評
 

 塩田武士原作のグリコ森永事件を扱った同名小説を基に製作されたフィクション。脅迫テープに使われた声は自分の声だったと偶然気付いてしまう星野源演じる主人公と、その時効になった事件の真相を追い求めるように厳命が下されたやる気のない新聞記者を小栗旬が演じるダブル主演映画。
 星野源の真面目なキャラクターと小栗旬の少しチャラいキャラクターとが、本作品の人物設定に合致していて、違和感なく観られた。二人とも、それぞれの特徴が出ていて、星野源はどんどん追求していって、かなり自分を追い込んでいくタイプ。脅迫テープの存在を見つけた後の行動は、コツコツと自身で確実に調べ上げ、母親との会話にも揺るぎない自信と相手を吐露させる圧倒感を感じさせた。その圧倒感は、母親に対する愛情に反する憎しみだが、それを、見事に映し出していた。もちろん、母親役の梶芽衣子の迫真に迫る演技がそれを成立させたと思う。短い時間の出演だったが、とても印象に残った。本作の見所の一つだと感じた。
 また、小栗旬は、最初は、何事にも無気力の新聞記者だったが、世間が忘れた事件を掘り起こすことで何があるのかと疑問を持ちつつも、上司や先輩に当時の状況を無理やり聞かされ、口うるさく言われ、取材を進めることで、自らが気付かなかった事件に隠れる人の存在意義が分かり出すことで、真相を追求しようと動き出す役柄に感情移入してしまった。因みに、ネタ晴らしに繋がるが、ロンドンに2回取材に行った際の小栗旬の演技は、監督の演出力と脚本の力も大きいと思われるが、素晴らしいと思う。特に2回目のロンドン取材の際の会話。これぞ映画と思った。
 未解決事件の真相に迫るというサスペンスをベースにした筋書きに、男同士の絆と親子の絆の人間関係を複雑に絡ませ、俳優陣のキャラクターに合わせた演出で味付けをしたエンターテイメント作品だと思う。長尺の映画だが時間は気にならない。「鬼滅の刃」の一人勝ち状況に負けるな!!!
(kenya)

監督:土井裕泰
脚本:野木亜希子
撮影:山本英夫
出演:小栗旬、星野源、市川実日子、梶芽衣子、阿部純子、宇崎竜童、松重豊、古舘寛治、篠原ゆき子、原菜乃華、火野正平、正司照枝他