1990年代初頭からこれまでの約四半世紀、それぞれの階級で印象に残った選手を各階級3人ずつ挙げていっています。記載上のルールは各選手、登場するのは1階級のみ。また、選んだ選手がその階級の実力№1とは限りません。個人的に思い入れのある選手、または印象に残った選手が中心となります。
前回から、全階級でヘビー級の次に重いクルーザー級となっています。元IBF同級級王者で、『カザフの虎』のことワシリー ジロフ(カザフスタン/Vassiliy Jirov)に続くのが、今回の主人公オーリン ノリス(米)。ノリスは、1990年代中盤、スーパーウェルター級で一時代を築いたテリー ノリスの実兄となります。
(今回の主人公はオーリン ノリス)
アマチュアの全米王者の座を獲得し、プロに転向したノリス。プロでのデビュー戦は1986年の6月まで遡ることになります。そしてノリスが行ったプロボクサーとしての最終戦は2005年の11月。そのキャリアは何と20年にも及びます。ノリスはちょうど70戦のプロキャリアがありますが、実をいうとそのほとんどをクルーザー級ではなく、ヘビー級で行っていました。しかし世界王座を獲得したのはこのクルーザー級で。しかもノリスが世界王座を獲得した時の同級は、非常に地味な階級として、今以上に世間一般に知られていない階級でした。それに加えて、1990年代初頭のスーパースターだったテリーの実兄として、非常に印象深い選手として記憶に残っています。
(兄オーリン(右)と弟テリー(左)のノリス・ブラザーズ)
スーパースターであったテリーを実弟に持ったオーリンですが、その実力は決して弟に劣るものではありませんでした。プロデビューから5年間、ヘビー級で戦っていたノリス。元ヘビー級王者や、その後に最重量級のベルトを腰に巻く選手、またはヘビー級王座に挑戦した経験を持った選手たちを拳を交えていきます。それらの選手の名前を挙げていくと、元WBAヘビー級王者グレグ ページ(米)、後にリディック ボウ(米)の保持していたヘビー級王座に挑戦したジェシー ファーガソン(米)、その後レノックス ルイス(英)を大番狂わせのKOで下し、WBCヘビー級王座を獲得したオリバー マッコール(米)等には勝利。東京ドームでマイク タイソン(米)に秒殺されたトニー タッブス(米)、その後イベンダー ホリフィールド(米)からダウンを奪うも、逆転KO負けを喫したバート クーパー(米)、そしてIBF王座をタイソンにより吸収されたトニー タッカー(米)には敗戦を喫しています。早い話がキャリア前半のノリスは、世界王座挑戦に最も近かった世界ランカーの内の一人。紛れもなく実力者だった事が分かります。
タッカーに敗れ、2度目のNABF王座を失ったノリスですが、その僅か2ヶ月後にはクルーザー級の同王座を獲得。徐々に新しい階級に体を慣らしながら、1993年11月にようやく世界初挑戦の機会を得ました。当時空位だったWBAクルーザー級王座を、南米の雄マルセル フィゲロア(亜)と争ったノリス。ほぼワンサイドの試合内容の末、6回KOで勝利。プロ42戦目で念願の世界のベルトを腰に巻くことに成功しました。
この王座を後のIBF王者アドルフォ ワシントン(米)や、こちらもIBFタイトルを獲得したアーサー ウィリアムス(米)を破りながら4度の防衛に成功したノリス。しかし1995年7月、英国で行われたネート ミラー(米)との防衛戦では、体調不良のためか、いいところなく8回でKO負け。そのキャリアで唯一の世界王座から転落してしまいました。
ノリスが獲得した王座(獲得した順):
NABFヘビー級:1987年11月25日獲得(防衛回数5)
NABFヘビー級(2度目):1991年4月30日(0)
NABFクルーザー級:1991年8月17日(3)
WBAクルーザー級:1993年11月6日(4)
IBAスーパークルーザー級(!?):1998年5月22日(1)
弟のテリーは3度スーパーウェルター級の王座を獲得しました。オーリンの方はというと、世界王座への返り咲きはありませんでしたが、ヘビー級に再転向し、世界トップレベルとの対戦を続けていきました。1997年の師走には、WBOヘビー級王座に就いた経験のあるヘンリー アキンワンデ(英)とWBA王座への挑戦権を賭け対戦し大差判定負け。1999年10月には、リングに復帰していたあのマイク タイソン(米)と拳を交えています。初回終了後にタイソンが放ったパンチでノリスがダウン。ノリスがダウンと同時に膝を痛め、試合継続が不可能となり試合は無効試合に。2001年にはWBOとWBCでヘビー級王座に就いたビタリ クリチコ(ウクライナ)に69秒でKO負け。一線級が相手となると黒星が先行しましたが、トップクラスの選手以外に負けを喫することなく2005年末まで戦い続けました。
(タイソンとの大一番を控えたノリス(左)と、試合途中で膝を痛めたノリス(右))
ノリスの終身戦績は57勝(30KO)10敗(4KO負け)1引き分け。身長177センチとクルーザー級でも小型の部類に入ったノリスですが、体格差を厭わずクルーザー級とヘビー級のトップ戦線で20年も戦い続けたのですから大したものです。また、ノリスをKO/TKOにしたのは、強打のバート、ミラー、クリチコとノリスの引退試合の相手を務めたオラ アフォラビ(英)の僅か4人。それはノリスの防御技術が如何に優れていたかを物語ったものと言っていいでしょう。
今も昔と変わらずに非常に地味なクラスであるクルーザー級。その階級の存在を教えてくれたのがオーリン ノリスでした。Youtubeで最近の姿を見かけました。トレーナーか何か、ボクシングに携わる仕事をしているようですが、元気そうでしたよ。