今から30年前の1994年2月26日、英国で行われた試合結果です。
WBAスーパーミドル級戦:
挑戦者スティーブ リトル(米)判定2対1(115-112、116-114、113-115)王者マイケル ナン(米)
*かつてのスーパースター候補生だったナンは、42勝(27KO)1敗という素晴らしい戦績の持ち主。1991年5月にIBFミドル級王座から転落するも、翌1992年9月にWBAスーパーミドル級王座を獲得。2階級制覇を達成し、その王座を4度の防衛に成功してきました。時折不安定で、ファンの欠伸を誘うようなボクシングを展開しますが、安定王者の一人であることは間違いありません。
(この試合が行われる数年前はスーパースター候補の一人であったナン)/ Ring Magazine
長身ナン(185センチとも188センチとも言われています)より10センチほど低いリトルは、アマチュアで228勝37敗という確かな実績を残したもののプロでは散々。21勝(5KO)13敗2引き分けと、世界戦に出場する選手としては疑問符の付くものでした。時々黒星は多くとも、実力は備わっている選手がいます。しかしリトルの実力は、その戦績ほどではなくとも、世界下位ランカーが妥当のものでした。
試合前、「とんでもないミスマッチだ!」と非難された一戦でした。しかし試合開始早々、小柄な挑戦者が左フックを中心とした連打でダウンを奪うという波乱のスタートで幕開けてしまいました。その後、ナンは大崩れすることなく得意のアウトボクシングで挑戦者の翻弄に取り掛かります。王者の動き自体は悪くはなかったのですが、リトルを甘く見ていたのか、その軽いジャブで挑戦者をアウトボクシングで捌き切ることは出来ませんでした。
会場からは定期的にブーイングが聞こえたこの一番。どちらの手が挙がってもおかしくない判定の末、リトルが僅差の判定勝利。引退すら考えていた車のセールスマンが、16ヵ月ぶりの実戦でシンデレラボーイの座を射止めまています。
(英国の地で番狂わせの主人公となったリトル)/Pinterest
WBCスーパーミドル級戦:
王者ナイジェル ベン(英)判定3対0(117-112、116-114、115-113)挑戦者ヘンリー ワートン(英)
*この年の前年1993年10月に、同国人でWBO王者クリス ユーバンクと激闘を演じているベン。ユーバンクとの一戦は、引き分けという痛み分けだったため王座統一はなりませんでした。しかし試合後、ベンの勝利を支持する声が多く聞かれ、ベンの評価はそれまで以上に高まることに。
今回ベンが迎えたワートンは、英国と英連邦王座を保持していた人気者ワートン。そのタフネスは折り紙付き。試合前から前年秋に行われた「ベン対ユーバンクII」のようなエキサイティングな試合になることが期待、そして予想されていました。
(この日のメインは英国人同士によるWBCスーパーミドル級戦でした)/ KO Fight Posters
先手を取ったのは、経験とスピードで勝るベン。「序盤でKO/TKO勝利を収めるのでは?」と思わせるような好スタートを切ります。
(挑戦者を激しく攻める王者)/ Boxing Treasures
しかし世界王者候補の呼び声が高かった挑戦者も黙っていません。体力とタフネスで王者を凌ぐワートンは、徐々に徐々にとエンジンを高めていきます。中盤戦以降王者をロープを背負わせる場面を多く作りました。しかしそこは歴戦の雄ベン。挑戦者の分厚い攻撃にタジタジとなりますが、大崩れすることなく試合終了。大歓声の中、無事勝者のコールを受けています。
(ワートンも負けじと反撃)/ X.com
ボクシングを知り始めて間もなかった自分(Corleone)にとり、日本人選手が存在しなかったスーパーミドル級は遠い存在でした。しかも当時はスーパーミドル級と言えば、ミドル級とライトヘビー級の伝統のある2つのクラスに挟まれたマイナー的な階級。しかしこうして振り返ってみると、現在の大英帝国の繁栄は、30年前のスーパーミドル級から始まったといっても大げさではないでしょう。
この2つのスーパーミドル級戦は、将来的にナンとベンによる王座統一戦を見据えて行われたものでした。しかしナンがポカをやらかしてしまったため、結局その大一番は実現せずに終わってしまいました。
当時のスーパーミドル級世界王者の面々はというと、
WBA:スティーブ リトル(米/防衛回数0)
WBC:ナイジェル ベン(英/5)
IBF:ジェームス トニー(米/2)
WBO:クリス ユーバンク(英/9)
そしてこれらの王座を虎視眈々と狙っていたのが、一階級下のIBFミドル王者ロイ ジョーンズ(米)でした。ナン、ワートンを含め、何らかの米英対決が行われてほしかったのですが、どの対戦カードも日の目を見ることはありませんでした。特にトニーやジョーンズあたりとベンの一戦が行われていれば、さぞかし熱戦となったことでしょうね。
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