歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

クローネンバーグが遠ざかる

2023年09月07日 | 日記

2年に一回関西で開かれる夏の展覧会が終わった。

思い返せば昨年の秋からここまで休みなく絵を描いてきた。

ちょっと一休みしようではないか。

 

山のギャラリーに12日間滞在して東京に帰ってくると、落ち着かない。

いいもの食べて、いい水浴びて、すっかりその気になってしまったのか。

空っぽの冷蔵庫を開け閉めし、ご飯作るためにスーパー行かなきゃとか思うと、

なんだかどっと疲れた。

ああ、こりゃあグロいアート映画でも観て心整えないといかんなぁと思い、

展覧会から帰った次の日にクローネンバーグ監督の最新作

『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の座席を予約した。

元々観たくて本まで買ったのに忙しくて観に行けてなかったのだ。

私の好きなヴィゴ・モーテンセンも出ているしね。

 

して電車の時間が近づいていたので、

鏡で身だしなみチェックをしたらTシャツが汚れているではないか。

急いで替えの服を漁るも展覧会後なので洗濯が間に合っていない。

しょうがないのでハンガーにかかっていた派手なシャツを着て走って家を出た。

どうにか電車には間に合って、しばしぼーっとしていると聞き覚えのない駅名がアナウンスされた。

路線図を調べるとどうやら反対の電車に乗ってしまったらしい。

気づいたのは二駅過ぎてからだった。

とりあえず次の駅で降りてホームのベンチに座った。

どう考えても間に合わない。

湿気まとわりつく9月の夕方、10年前にやめたのにタバコでも吸いたい気分だった。

今日はそういう日なんだ、うん。

 

最寄の駅に帰ってくると雨が降り出した。

私は負けません。

折りたたみ傘があるもんねー!

そして家に着くと、眼鏡を忘れていたことに気がついた。

乱視なので映画館では眼鏡が必須なのだ。

結局何がどうなってもクローネンバーグの映画を観る日じゃなかったんだと妙に納得したのだった。

チケット代もったいなかったけど、教訓さ。

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雨と九龍

2023年06月20日 | 日記

新宿三丁目にはよく行くけれど、画材屋と寄席にしか用事はない。

だから、一歩奥に入ると飲食店がひしめき合っていて驚いた。

知っている町が、全く違う町に見える不思議な体験だ。

ついでに、目的以外は目に入らない自分の視野の狭さにも驚いた。

 

さっそく先日友達と三丁目で待ち合わせをした。

梅雨真っ只中にあって雨も降らず暑くもなくちょうどいい夕方、

週初めにも関わらずどんどん人が増えてくる。

 

私とその友達はお店の好みが似ている。

おじさんやおばさんがやっているような、気取ってないお店だ。

通りを2周して、最初に目星をつけた店に決めた。

東アジアの屋台を思わせる雑多な屋外席が気に入った。

その名も「香港屋台 九龍(クーロン)」。

これが大当たり。

兎にも角にも、料理が美味しかった。

中華料理といっても地域によって全然違うらしく、

四川などに比べて辛くないのでお腹を壊す心配もない。

香港料理が中華なのかは知らないけれど。

この店構え。裸電球がいい味出してる。

堂々と灰皿が置いてある感じがたまらなく好き。

 

最初は2組しかいなかった屋外席が暗くなると満席になっていた。

わかる!こんな日は開放感がある外がいいよね。

ピータン!友達が好きなので頼んだけれど、とんだグルメだよ。

子供の頃の苦い記憶が払拭できるかと思い一切れもらったけど、

その記憶も相まって「今一番苦手な食べ物」に昇格した。

小籠包ははずせない。

 

お店柄に反して、若いお客さんが多かった。

むしろこういう店が好まれる時代なのかもしれない。

30代も後半に差し掛かる二人が仕事や家族の話であーだこーだ言っていると、

隣の男子二人組が逆ナンされていて私たちは目配せをする。

なんかいいなぁ、こういうの楽しいよなぁと聞き耳を立てて遊んだ。

 

閉店まで居座り帰りはセブンでコーヒーを買って駅まで歩いた。

ちょっと酔っ払った二人がバカみたいな話でぎゃははと笑う。

そういうときに飲むコーヒーはなぜだかとても美味しい。

JRの駅前のスロープに腰掛け飲み干すまで喋った。

右から左へ人の波を観察する。

その波に逆行してナンパしている男がいたけれど、どう考えても礼儀がなっていない。

そのだらしない格好で女の子を引っ掛けようという根性が気にくわない。

と完全なる外野が的外れなことを議論する。

トー横にたむろしている子供たちの話や、猫の3D広告の話をした。

有名なヤクザマンションもあれば、伊勢丹があったり、

いろんな人が入り混じったるつぼで一歩壁を越えると別世界がある。

 

と、突然腕にポツっと雨が当たった。

「これはくるよ!早く行きな!」と私の背中を押した友達が妙にかっこよかった。

そこからしばらく外を歩かないといけなかったので急いで別れた。

友達の言った通り急に土砂降りに変わった。

信号待ちの対岸で傘を開いている人たちが目に入った。

みんなちゃんとしてるなぁ。

ここまできたらもういいや。

信号が青になりみんな一斉に動き出す。

傘をさしたサラリーマン風の人、相合傘の人、走る人、顔に手をかざして歩く人。

なんだか映画みたい。

雨は日常の風景をドラマチックに演出する。

頭の中ではELOの『Rain is falling』が流れている。

いつまでたっても私は妄想の中に生きている。

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気分がいいんです

2023年05月02日 | 日記

ここのところ気分がいい。

言語化するのは難しいけれど、

誰かの一言で世界が変わる、

そういう場所に私は住んでいる。

誰かの言葉の意味を知るためにどこまでも想像し抜く。

偉そうに無知を気取るのはやめようと思う。

 

「想像力」って言葉を知っていたから使っていたけど、

その言葉の意味を半分も理解していなかったかもしれない。

これを突き詰めると、どこまでも、どこまでもいける。

想像力を片手に自分の内を覗くと、なぜだか外の世界が見えてくる。

うわわあ、繋がってるやん。

 

街行く人々がしっかり人に見えてくる。

誰かに出会うたび、人が増えていく。

人が人であるというだけで、なんて豊かな世界なんだと感動してしまう。

 

ある人に言われた。

「この世界にはいろんな人が住んでいる。

僕みたいな視覚障害者もいれば、車椅子の人とかね。

多くの人には見えていないんだけど、同じ世界に暮らしているんだよ。

それを知ってほしいんだ。」

ぼやけていた世界がクリアになっていく。

 

彼は私の描いた絵を見て誰よりも楽しんでくれた。

彼の見た絵には際限がない。

二人で話しているとどこまでも、どこまでも行ってしまう。

額に収められていた世界が動き出す。

 

情報を入れすぎてきゅうきゅうになるのは一旦やめよう。

スマホやテレビがなくても、面白いことがいっぱいあるわ。

今日はコーヒー屋の帰りに、かっこいいおじいさんにナンパされた。

青いクラシックカーの運転席から右肘を窓にひっかけて、

「その自転車いいね、タイヤ太いけど乗りやすい?」って。

暇なのかなんなのか。

話の導入が面白かったから、しばしお付き合いして楽しませてもらった。

80歳超えたから免許返納しろと子供から言われているらしい。

遠くの病院に妻が入院しているから悩ましい云々。

 

外で吹いてる柔らかい風が私の内も通り過ぎていく。

ほんと気分がいい。

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雨の散歩

2023年04月03日 | 日記

2週間ほどコーヒー豆を切らしていた。

朝に濃いめのコーヒーを淹れて、作業机でゆっくり飲むといい1日になる気がする。

よっしゃーやるか!と体を伸ばし屈伸とかしてその気になるのだ。

 

以前弟がうちに来た時、コーヒー飲みたいと言うので淹れたら「薄い!」と言われ、

「いやそれは飲みやすいの間違いだ」と思ったけれど、

弟向けに細挽きにしたらそれが美味しくて以来それでやっている。

弟も30代のおっさんだけど、私にとってはいつまでたっても生意気な弟だ。

 

豆を2週間も切らしているからというわけじゃないけれど、

だらだらと言い訳をしいろんなことが締まらない。

行こうと思えば自転車で7分のところにコーヒー問屋があるのだけど、

しばらく家を出ていないと外に出るのが億劫になる。

それに関東では雨の日が続いていた。

良くも悪くも自由業、久しく雨の中を歩いていない。

ザーザー降っている景色を眺めていると、突然その中を歩きたい衝動に駆られた。

 

日焼け止めも塗らず、ハンガーにかかっていた青いワンピースを着て家を飛び出した。

よく確認もぜずに出てきたもんだから、

途中ワンピースに大きなシミがついているのに気づいてちょっと凹むも、

しばらく歩いていたら雨に濡れシミがカモフラージュされていてなんだか可笑しかった。

 

日曜日だったからか、商店街は賑わっていた。

会社なのか親族の集まりなのか、傘をさした集団が至るとことでたむろしていた。

この商店街に密かに応援しているお店がある。

韓国系チキンのテイクアウト専門店だ。

黄色と緑の電飾で彩られた看板に日本語ぽくない日本語の店名。

どうしても韓国チキンが食べたくなって一度入ったことがある。

外の看板からは想像しにくい雑然とした店内はやはり日本ぽくない。

奥から出てきたのはガタイのいい韓国人(多分)の青年でニコリともしない。

彼からしたら知らんがなという感じだと思うけど、

韓国ドラマをよく見る私には妙な感慨があった。

それでもこの雰囲気は潔癖性日本国では厳しいだろうなというのもありつつ、

どうか異国の地で頑張ってくれと思ったのだった。

完全に私のドラマだ、すまぬ青年。

それからあの店がまだ営業しているかをチラチラ確認している。

どうやら今週もまだやっているようだ。

 

コーヒー問屋は商店街の一番奥にある。

いつもは自転車だから一瞬なのだけど、歩くと結構遠い。

お気に入りの革のブーツがビチョビチョだ。

それでもこの靴じゃないと嫌だったんだからしょうがない。

コーヒー屋で豆を頼んで焙煎の間無料のコーヒーをいただいた。

幾つかのメニューから選べるのだけど、ここではモカと決めている。

はぁ〜久々のコーヒー。

うまいぜ〜。

 

それから近くのスーパーで買い物して電車で帰った。

こういう日はElectric Light Orchestraの『Rain is Falling』が聴きたくなる。

歩くって頭の中を整理したり、いろんなものをはらいのけたりできる大事な時間なんだな。

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下北と古着とカレーとお酒

2023年02月04日 | 日記

先日友達と下北沢へ行ってきた。

何年ぶりだろうか、相当久々なのは間違いない。

20代前半から半ばくらいまでよく遊びに行っていた。

ファッションにこだわりがある方じゃないけど、触手が動くのはいつも古着だった。

昔アルバイト先で後輩に「そんなたんぽぽさんらしい服よく見つけてきますね」と言われたことがある。

あの頃来ていた古着を今でも着ている。

古着屋で見つけたいいものは持ちがいいからそういう意味でも信用している。

シカゴで買った革のポシェットは未だにスタメンだ。

 

数ヶ月前に友達が「行きたいカレー屋さんがあるから下北に行こう」と誘ってきた。

下北に近い職場だったからか、下北がカレー激戦区だったからか彼女のことはわからない。

年末忙しかったので年が明けて彼女に連絡すると、「なんで行きたかったんだっけ?」と返ってきた。

本当いい加減でいい加減。

それでもグルメの彼女は行くと決まればたくさんリサーチしていくつかピックアップしてくれた。

私は南インドカレーに興味があったので、そっち系のお店に決まった。

 

久しぶりの下北は変わったような変わってないような。

開発されて駅前の雰囲気はだいぶ変化していた。

でも私が行っていた時期にはすでに工事がはじまっていたから、

かつての下北を慈しむ人たちほど思い入れがあるわけではない。

ただ一丁前に昔の風景が消えていくのは寂しいよなとか慮ってみる。

裏路地。

 

お昼時だったので並ぶのも覚悟して行ったが、思いの外すんなり入れた。

これがなかなか美味しかった。

席が狭いのはあまり好きじゃないけれど、長居されても困るよね。

 

それからいくつか古着屋を巡った。

そういえばその日きていたコートも下北の古着屋で買ったものだった。

模様の糸がほつれる度直して着ている。

奇抜なマネキンがいたのでパシャリ。

このお店で黒いワンピースを買った。

 

それから喫茶店にでも行こうという話になり行ったはいいが満席。

二人とも落ち着いた雰囲気の昔ながらの店が好きでチョイスは間違いないんだけど、

一緒に遊ぶ度ことごとく入れない。

しょうがないから駅前のチェーン店に入るという流れもおなじみだ。

下世話な話をするならむしろ賑やかなチェーン店の方が気が楽かもしれない。

このお店に入りたかった。入り口から漂ういい店感。

 

何時間一緒にいても時間は足りないもので、夕方から居酒屋へ。

居酒屋もひさしぶり。

夫はお酒を飲まないし、日常生活ではほとんど縁がない。

コロナ禍になってから友達で集まるときはレンタルスペースを借りるようになったのも拍車をかけている。

周りを気にしなくていいしだらだらできるし、30代半ばの女どもは味をしめたのだ。

その居酒屋は店員と対面で少しやりづらかった。

気さくでいい店員さんなのだろうけど、見られている感じがしてソワソワした。

 

私は今までお酒というものに興味がなかった。

弱いというのもあるけれど、美味しくもないしわざわざ飲む理由がよくわからなかった。

それがここのところ日本酒の美味しさに気づきはじめている。

飲み方はいろいろあるだろうけど、美味しいご飯を作ってそれと一緒に飲むのが楽しい。

ご飯の美味しさを引き立ててくれるのだ。

なんと新しい世界。

まだ日本酒以外は出会っていないけれど、

酒飲みの気持ちが少し理解できたような気がしてなんだかいい気分。

全然わかっていない可能性もあるけれどね。

 

今度は合羽橋の道具街を散策しようと約束した。

銅製の卵用フライパンが欲しいという話で盛り上がった。

数ヶ月して行きたかった理由を忘れてたりしてね。

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