この秋、新宿の紀伊国屋書店で初めて彼の絵を見た。
ただの画集だったけど、開く前から予感があった。
数ヶ月前に母が、数週間前に大阪の知り合いが言っていた人だ。
画集を手に取り適当にパラパラとめくった。
はっとした。
タイトルは『The Pen』。
よく観もせず半ば興奮した状態でそれを買っていた。
陳列棚の側面に9月後半から日本橋高島屋で行われる展覧会のポスターが貼ってあった。
行こう。
作品数はそこまでないと踏んでいた。
大きな作品が数点観れれば満足だ。
10月1日に大学の友達と観に行くことになった。
日曜日だったから高島屋8Fの食品売り場まで池田学展目当ての人が溢れていた。
おばあさんが不思議な顔で「これは何の列か?」と聞いてきたほど場違いな行列だった。
池田学展The Pen-凝縮の宇宙-日本橋高島屋
入場料は800円のところ、友達が割引券を持ってきてくれていたので700円になった。
なんて安いんだろう。
入口に群がる人の中には、年配の人や若い人、子どもまでいた。
なかなか動かず辛抱しながら、ついに一つ目の大きな作品に到達した。
大学生の頃に描いた白黒の作品だ。
うっひょーーーーーー。
観るのに時間がかかるってのにも納得だ。
何しろ細かい。
タイトルのThe Penとは単純にペンで描いているという意味だ。
絵を描かない人はあまり馴染みがないかもしれないけど、
漫画家がよく使う丸ペンという極細のつけペンを使っている。
細かいだけなら適当に観るけど、細かいのに壮大で楽しくてやさしい。
遠目から観ると厳かな雰囲気すら観てとれる絵が、近づいて観ると全く違う顔を持っている。
細かさの中にユーモアがある。
みんないろんなところを指差して各々笑ったりつぶやいたりしている。
隣で観ていたおばさんが「ここにも何かいるよ」と話しかけてくるほど、気を緩ませてくれる不思議な絵だ。
みんなじっくり観るから人に気を使わずにじっくり観れる。
人がごった返す展覧会は嫌いだけど、今回はこれでよかったのかもしれない。
予想に反して作品数は100点以上。
全部観るのに2時間半くらいかかった。
展覧会には夫Kと行くことが多くその場合会場の入口で解散し別々に観て出口で再会するというのが常だが、
その友達は展覧会に行くのが初めてでできれば私と一緒に観たいと言うので二人で回った。
それが予想外に楽しかったのでK以外と行く時はそれもありだな。
人と見ると自分が気づかなかった部分にも気づけたりするのだ。
今回は絵に紛れている池田さんのサインを二人で探して盛り上がった。
ずっとファンだったならわかる。
つい最近知ってほとんど初めて絵を観てこんなに楽しかったのは初めてかもしれない。
もちろん「うまいっ!」とか「すごいっ!」てのは前提にあるのだけれど、
絵を観るだけでこんなにも楽しくなるというのはすごく不思議な体験だ。
動きもしないただ1枚の絵がまるで遊園地に遊びに行ったかのような満足感を与えてくれる。
私が今まで好きだった多くの画家と大きく違うのは絵が持っている絶対的な包容力だ。
世界観の押し付けがなく、むしろ「なんでもいいんだよ」と受け入れてくれている気がする。
なんてやさしい絵だろう。
シカゴで3年かけて描いた『誕生』。
彼の出身地である佐賀県立美術館が買い取った。
翌日何を思ったか数日家に帰ってなかったKから「池田さんのやつ観に行きたい」と連絡が来た。
私は私でなんの疑いもなく2日連続で観に行った訳だが、そこで思わぬサプライズに出くわした。
池田さんご本人がいたのだ。
それも近くまで来たから顔を出したという感じで、15分間くらいの短い滞在だった。
私はなんて運がいいのだろう。
スタッフが「池田さんのサイン会をやりますので、サインが欲しい方は画集を買って…」と声がけをしている。
これまた何の疑いもなく持っているのと同じ画集ともう一冊買ってサインをいただいた。
眼鏡をかけた素朴で柔らかい雰囲気の人だった。
声をかけると素の笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
私ってば本当に運がいいんだから、困っちゃうね。
ただの画集だったけど、開く前から予感があった。
数ヶ月前に母が、数週間前に大阪の知り合いが言っていた人だ。
画集を手に取り適当にパラパラとめくった。
はっとした。
タイトルは『The Pen』。
よく観もせず半ば興奮した状態でそれを買っていた。
陳列棚の側面に9月後半から日本橋高島屋で行われる展覧会のポスターが貼ってあった。
行こう。
作品数はそこまでないと踏んでいた。
大きな作品が数点観れれば満足だ。
10月1日に大学の友達と観に行くことになった。
日曜日だったから高島屋8Fの食品売り場まで池田学展目当ての人が溢れていた。
おばあさんが不思議な顔で「これは何の列か?」と聞いてきたほど場違いな行列だった。
池田学展The Pen-凝縮の宇宙-日本橋高島屋
入場料は800円のところ、友達が割引券を持ってきてくれていたので700円になった。
なんて安いんだろう。
入口に群がる人の中には、年配の人や若い人、子どもまでいた。
なかなか動かず辛抱しながら、ついに一つ目の大きな作品に到達した。
大学生の頃に描いた白黒の作品だ。
うっひょーーーーーー。
観るのに時間がかかるってのにも納得だ。
何しろ細かい。
タイトルのThe Penとは単純にペンで描いているという意味だ。
絵を描かない人はあまり馴染みがないかもしれないけど、
漫画家がよく使う丸ペンという極細のつけペンを使っている。
細かいだけなら適当に観るけど、細かいのに壮大で楽しくてやさしい。
遠目から観ると厳かな雰囲気すら観てとれる絵が、近づいて観ると全く違う顔を持っている。
細かさの中にユーモアがある。
みんないろんなところを指差して各々笑ったりつぶやいたりしている。
隣で観ていたおばさんが「ここにも何かいるよ」と話しかけてくるほど、気を緩ませてくれる不思議な絵だ。
みんなじっくり観るから人に気を使わずにじっくり観れる。
人がごった返す展覧会は嫌いだけど、今回はこれでよかったのかもしれない。
予想に反して作品数は100点以上。
全部観るのに2時間半くらいかかった。
展覧会には夫Kと行くことが多くその場合会場の入口で解散し別々に観て出口で再会するというのが常だが、
その友達は展覧会に行くのが初めてでできれば私と一緒に観たいと言うので二人で回った。
それが予想外に楽しかったのでK以外と行く時はそれもありだな。
人と見ると自分が気づかなかった部分にも気づけたりするのだ。
今回は絵に紛れている池田さんのサインを二人で探して盛り上がった。
ずっとファンだったならわかる。
つい最近知ってほとんど初めて絵を観てこんなに楽しかったのは初めてかもしれない。
もちろん「うまいっ!」とか「すごいっ!」てのは前提にあるのだけれど、
絵を観るだけでこんなにも楽しくなるというのはすごく不思議な体験だ。
動きもしないただ1枚の絵がまるで遊園地に遊びに行ったかのような満足感を与えてくれる。
私が今まで好きだった多くの画家と大きく違うのは絵が持っている絶対的な包容力だ。
世界観の押し付けがなく、むしろ「なんでもいいんだよ」と受け入れてくれている気がする。
なんてやさしい絵だろう。
シカゴで3年かけて描いた『誕生』。
彼の出身地である佐賀県立美術館が買い取った。
翌日何を思ったか数日家に帰ってなかったKから「池田さんのやつ観に行きたい」と連絡が来た。
私は私でなんの疑いもなく2日連続で観に行った訳だが、そこで思わぬサプライズに出くわした。
池田さんご本人がいたのだ。
それも近くまで来たから顔を出したという感じで、15分間くらいの短い滞在だった。
私はなんて運がいいのだろう。
スタッフが「池田さんのサイン会をやりますので、サインが欲しい方は画集を買って…」と声がけをしている。
これまた何の疑いもなく持っているのと同じ画集ともう一冊買ってサインをいただいた。
眼鏡をかけた素朴で柔らかい雰囲気の人だった。
声をかけると素の笑顔で「ありがとう」と言ってくれた。
私ってば本当に運がいいんだから、困っちゃうね。