TBSラジオの「東京ポッド許可局」でこの映画の話をしていなかったらきっと観なかった。
あのおじさんたちは最高だ。
観てから10日も経ったのに、未だに余韻を引きずっている。
「面白かった」と手放しで賞賛できるような映画ではない。
苦しい、でも観てよかった。
おすすめです。
今Netflixで観れるので是非。
以下ネタバレあり。
『ヤクザと家族 The Family』
監督:藤井道人
脚本:藤井道人
製作:佐藤順子、角田道明、岡本圭三
製作総指揮:河村光庸
出演者:綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗
「新聞記者」が日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた藤井道人監督が、時代の中で排除されていくヤクザたちの姿を3つの時代の価値観で描いていくオリジナル作品。これが初共演となる綾野剛と舘ひろしが、父子の契りを結んだヤクザ役を演じた。1999 年、父親を覚せい剤で失った山本賢治は、柴咲組組長・柴崎博の危機を救う。その日暮らしの生活を送り、自暴自棄になっていた山本に柴崎は手を差し伸べ、2人は父子の契りを結ぶ。2005 年、短気ながら一本気な性格の山本は、ヤクザの世界で男を上げ、さまざまな出会いと別れの中で、自分の「家族」「ファミリー」を守るためにある決断をする。2019年、14年の出所を終えた山本が直面したのは、暴対法の影響でかつての隆盛の影もなくなった柴咲組の姿だった。(映画ドットコムより引用)
罪を犯した18、19歳を「特定少年」として厳罰化する改正少年法が先日成立した。
成人年齢が18歳に引き下げられることに整合性をもたせた形だ。
とても今っぽい。
龍谷大学教授の浜井浩一さんは少年法は再犯を防止するという意味においてうまくいっていたと言う。
厳罰化することで少年たちの更生の機会はは失われる可能性がある。
「犯罪者は裁かれるべきだ」
正しい、けど、彼らを取りこぼしたのは今の社会であり大人たちだ。
「自己責任」とか「自業自得」と声高に叫ぶ大人は、細い糸がどこかで自分に繋がっていることに気づいていない。
入管法改正案にしても、日本はとことん時代に逆行している。
これほど他者に対して厳しいのはなぜなんだろう。
片一方の理性が暴走している。
彼らもまた社会の被害者なのか。
そもそも時代は福祉的に成熟していくという考え自体が幻想にすぎないのかもしれない、と最近は思う。
ヤクザもチンピラも詐欺師もみんな「反社」でひとくくりにされる現代。
暴対法成立後、暴力団の徹底排除によって独自の社会を持つヤクザにも法律が通用するのだと知った。
かつて隆盛を誇ったヤクザは今どうしているのだろう、ふとそう考えることがある。
ヤクザ、ヤクザっていうけど実はその存在については映像の中でしか知らない。
この映画を観たとて、結局映画の中の話にすぎない。
「知らない」という残酷さが確実に私の中にある。
それでも、この映画が突きつける厳しさから目を背けてはいけないのだと思う。
この映画はイメージの肥大化したヤクザという存在を嫌という程一人の人間として描くことで、
誰もが心の奥に抱えて見ないふりをしている矛盾や不条理を浮き彫りにする。
折り合いのつかない倫理と感情の間を行き来させ困惑させるのだ。
善も悪も見失う迷宮だ。
答えを決めれば楽になれるかもしれないけど、この不毛な揺れに決着をつけてはいけないような気がする。
何と言ってもヤクザのありようが激変した2019年の物語が胸を打つ。
「家族」というキーワードが人々のつながりを強調する。
組員のほとんどいなくなった柴咲組、
女と子ども、
柴咲組をやめたかつての仲間、
ずっと通った食堂の女将と成長した息子。
つきまとう元ヤクザという看板に苦しめられ、切っても切れないつながりの中で人を傷つけ自分も傷つけられる。
「ヤクザ辞めても、人間として扱ってもらうには5年かかるんです。口座も、保険も、家も」
服役して法律的に罪を償ったとしても社会的制裁は免れない。
最後、最大の暴力でもって若者を守ったってのがね、もう心の中ぐちゃぐちゃ。
自分がどうなろうともヤクザの業を自分の代で終わらせようとしたのだろうか。
もしかしたらあのラストは一時代を築いたヤクザという存在への幕引きと鎮魂の意もあるのかもしれない。
ラストの翼の大人びた表情が印象的だった。
エンドロールとともに静かに流れはじめるmillennium paradeの『FAMILIA』が物語をそっと抱きしめる。
映画を観ているときは緊張感でこわばった心が『FAMILIA』によって少しずつほどかれていく。
涙もろい私だが、この曲がなって初めてほろり。
映画を観た後で、ぜひこの曲のMVを観て欲しい。
少しだけ救われた気持ちになるから。
綾野剛が思いの外良かった。
『ロンググッドバイ』以来のはまり役ではないかと。
19歳時の山本賢治があまりに美しくてびっくり。
俳優陣がみんな素晴らしかった〜。
久々の日本映画だったけど、捨てたもんじゃないかもね。
いや、最近日本映画ばっかだったわ。
あのおじさんたちは最高だ。
観てから10日も経ったのに、未だに余韻を引きずっている。
「面白かった」と手放しで賞賛できるような映画ではない。
苦しい、でも観てよかった。
おすすめです。
今Netflixで観れるので是非。
以下ネタバレあり。
『ヤクザと家族 The Family』
監督:藤井道人
脚本:藤井道人
製作:佐藤順子、角田道明、岡本圭三
製作総指揮:河村光庸
出演者:綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗
「新聞記者」が日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた藤井道人監督が、時代の中で排除されていくヤクザたちの姿を3つの時代の価値観で描いていくオリジナル作品。これが初共演となる綾野剛と舘ひろしが、父子の契りを結んだヤクザ役を演じた。1999 年、父親を覚せい剤で失った山本賢治は、柴咲組組長・柴崎博の危機を救う。その日暮らしの生活を送り、自暴自棄になっていた山本に柴崎は手を差し伸べ、2人は父子の契りを結ぶ。2005 年、短気ながら一本気な性格の山本は、ヤクザの世界で男を上げ、さまざまな出会いと別れの中で、自分の「家族」「ファミリー」を守るためにある決断をする。2019年、14年の出所を終えた山本が直面したのは、暴対法の影響でかつての隆盛の影もなくなった柴咲組の姿だった。(映画ドットコムより引用)
罪を犯した18、19歳を「特定少年」として厳罰化する改正少年法が先日成立した。
成人年齢が18歳に引き下げられることに整合性をもたせた形だ。
とても今っぽい。
龍谷大学教授の浜井浩一さんは少年法は再犯を防止するという意味においてうまくいっていたと言う。
厳罰化することで少年たちの更生の機会はは失われる可能性がある。
「犯罪者は裁かれるべきだ」
正しい、けど、彼らを取りこぼしたのは今の社会であり大人たちだ。
「自己責任」とか「自業自得」と声高に叫ぶ大人は、細い糸がどこかで自分に繋がっていることに気づいていない。
入管法改正案にしても、日本はとことん時代に逆行している。
これほど他者に対して厳しいのはなぜなんだろう。
片一方の理性が暴走している。
彼らもまた社会の被害者なのか。
そもそも時代は福祉的に成熟していくという考え自体が幻想にすぎないのかもしれない、と最近は思う。
ヤクザもチンピラも詐欺師もみんな「反社」でひとくくりにされる現代。
暴対法成立後、暴力団の徹底排除によって独自の社会を持つヤクザにも法律が通用するのだと知った。
かつて隆盛を誇ったヤクザは今どうしているのだろう、ふとそう考えることがある。
ヤクザ、ヤクザっていうけど実はその存在については映像の中でしか知らない。
この映画を観たとて、結局映画の中の話にすぎない。
「知らない」という残酷さが確実に私の中にある。
それでも、この映画が突きつける厳しさから目を背けてはいけないのだと思う。
この映画はイメージの肥大化したヤクザという存在を嫌という程一人の人間として描くことで、
誰もが心の奥に抱えて見ないふりをしている矛盾や不条理を浮き彫りにする。
折り合いのつかない倫理と感情の間を行き来させ困惑させるのだ。
善も悪も見失う迷宮だ。
答えを決めれば楽になれるかもしれないけど、この不毛な揺れに決着をつけてはいけないような気がする。
何と言ってもヤクザのありようが激変した2019年の物語が胸を打つ。
「家族」というキーワードが人々のつながりを強調する。
組員のほとんどいなくなった柴咲組、
女と子ども、
柴咲組をやめたかつての仲間、
ずっと通った食堂の女将と成長した息子。
つきまとう元ヤクザという看板に苦しめられ、切っても切れないつながりの中で人を傷つけ自分も傷つけられる。
「ヤクザ辞めても、人間として扱ってもらうには5年かかるんです。口座も、保険も、家も」
服役して法律的に罪を償ったとしても社会的制裁は免れない。
最後、最大の暴力でもって若者を守ったってのがね、もう心の中ぐちゃぐちゃ。
自分がどうなろうともヤクザの業を自分の代で終わらせようとしたのだろうか。
もしかしたらあのラストは一時代を築いたヤクザという存在への幕引きと鎮魂の意もあるのかもしれない。
ラストの翼の大人びた表情が印象的だった。
エンドロールとともに静かに流れはじめるmillennium paradeの『FAMILIA』が物語をそっと抱きしめる。
映画を観ているときは緊張感でこわばった心が『FAMILIA』によって少しずつほどかれていく。
涙もろい私だが、この曲がなって初めてほろり。
映画を観た後で、ぜひこの曲のMVを観て欲しい。
少しだけ救われた気持ちになるから。
綾野剛が思いの外良かった。
『ロンググッドバイ』以来のはまり役ではないかと。
19歳時の山本賢治があまりに美しくてびっくり。
俳優陣がみんな素晴らしかった〜。
久々の日本映画だったけど、捨てたもんじゃないかもね。
いや、最近日本映画ばっかだったわ。