西川美和の「素晴らしき世界」をイオンで見た。
殺人で服役していた男が娑婆に戻ってからどう生きてゆくか。
佐木隆が実在の人物をモデルに書いた小説を映画化したもの。
前科者の烙印を押された人間と社会との関わり。
事実はともかく、描き方は2つしかない。
社会に受け入れられず刑務所に舞い戻るか。
良い人たちに恵まれ社会に同化していくか。
前者の方がリアルだろうが、どうせ映画にするなら後者の方が救いがあって良い。
甘いと言われようが、断然そっちの方が好きだ。
だが西川美和は第3の答えを出した。
社会に受け入れられ始めた矢先に持病を拗らせ呆気なく殺してしまったのである。
これは狡い。
甘い結末が嫌なら危険な未来を予感させて終わる方法もあったし、実際そう匂わせるシーンも用意している。
でも殺しちゃいけない。
殺すのは狡い。
でもラストシーンは良い。
「娑婆は生きにくい。でも空は広い」
姉さん役のキムラ緑子の台詞がスッと空に消えてゆく。
「ゆれる」以来、注目している西川美和。
まだ「ゆれる」は超えられていない。