ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

白いリボン

2010-11-23 20:30:35 | さ行
静かに近づく、いやな予感……。

「白いリボン」87点★★★★

09年カンヌ国際映画祭でパルムドール受賞。
ドイツの“恐るべき”作家
ミヒャエル・ハネケ監督の最新作。

見終わってなお“恐るべき”余韻が
とまりません。


1913年、第一次大戦直前の
北ドイツの小さな村。

大地主とプロテスタント教会を中心とした
静かなこの村で
次々と不穏な事件が起こりはじめる。

最初は村で唯一のドクターの
落馬事故。

そして小作人の転落死……

いったい犯人は誰なのか?


いや~これはスゴイですよ。
サスペンスだけど答えはない、2時間24分。


見終わってすぐは
謎の解明にばかり気がいってしまい
「謎すぎる~」と歯ぎしりもしましたが


まあ時間がたつと
謎解きは本当は重要ではなく

それより
2ヶ月近くたっても
まだこんなに余韻が残ってることの凄さに気づく、
という映画ですね・・・。ゾクゾク。


閉鎖的な村。不可解な事件。
やがて浮き彫りになる
村の“陰”の部分。

無垢と危険が表裏一体の
子どもという存在の恐ろしさ……


また
それらを静かに映し出す
モノクロームの映像が抜群に美しい!

これはカラーで撮影したフィルムを
モノクロにデジタル変換したもの。
いまの機材だと
ろうそくの光など写せる感度がなかったからだそうで

なるほど
グレートーンがめちゃくちゃ繊細でした。


そんな映像をはじめとして
この映画には残忍な描写などなく
逆に非常に抑制が効いている。

だからこそなのか
本当に「いや~な感じ」が漂うんですね。

で、この“予感”こそが
この映画のキモらしいのです。


でも、その“予感”が何を意味してるのかは
番長の稚拙な頭では到達できなかった。

そこで
おなじみ「週刊朝日」ツウの一見で
ドイツ文学者でエッセイストの
池内紀先生にお話を伺いまして


もう、腑に落ちることいっぱいでした。

重要なポイントは
映画の背景が「第一次大戦前夜」だということ。
ハネケの仕掛けたさまざまなトラップ(?)も
教えていただいた次第。


掲載は11/30発売号(予定)。
ぜひご覧くだされ……。


まあ監督いわく
「すべての事件に論理的な説明がなされている」
そうで
うーむやはりじっくり考えてみれば
やっぱりあれが犯人?……

2度観るのがよさそうです。


★12/4から銀座テアトルシネマで公開。ほか全国順次公開。

「白いリボン」公式サイト

なお12/4~17まで
ヒューマントラストシネマ有楽町で
「ミヒャエル・ハネケの軌跡」として
過去作品が上映されます。

観てない作品がいっぱいある……観たい!
コメント (2)
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