ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

別離

2012-04-03 20:43:48 | は行

こちらはアカデミー賞外国語映画賞受賞のイラン映画。
これは必見!のおもしろさです。


「別離」84点★★★★

「彼女が消えた浜辺」監督の新作。

シミン(レイラ・ハタミ)と夫ナデル(ペイマン・モアディ)は
テヘランに暮らす結婚14年目の夫婦。

シミンは11歳の娘(サリナ・ファルハディ)の将来のために、
あちこち奔走して国外移住の許可を取る。

だが、ナデルの父がアルツハイマーになってしまい
彼は移住できないと言い出す。

シミンはしばらく家を出ることになり
ナデルはお手伝いの女性ラジエー(サレー・バヤト)を雇う。

しかし、あるとき
ナデルの家である事件が起きる。

そして事件は、思わぬ波紋を広げてゆき――?!


いや~、アスガー・ファルハディ監督という人は、ホントに巧い。

「彼女が消えた浜辺」も面白かったけど、これもド凄い。

一般的な「人間の深層に迫る」映画の
さらに3段階以上深く潜っている感じです。


ミステリーでもあるので詳しくは秘密にしますが(笑)

「彼女が~」と似ているのは
基本的に「善」なる
市井のまっとうな人物たちが登場するところ。

しかしある事件が起こり、その謎を解くうちに
人間誰もが持っている「エゴ」がむき出しになっていくさまが
実に繊細に、巧妙に描かれるところですね。

悪意ではない、
だからこそ厄介な人間の“心理”の複雑さと、それによってこじれていく物事を
ものの見事に言い当てているんですねえ。

人間の心理に迫るミステリーであり、
かつ
そこに社会における問題(格差や宗教感、介護問題などなど)を絶妙に織り交ぜた
一級品だと思います。


どんなに相手のことを思っていても、
そこに「自分のため」は確実に存在する。

完璧な自己犠牲などないのか、と考えさせられました。

必見。

★4/7(土)から全国で公開。

「別離」公式サイト
コメント (2)
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