ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フタバから遠く離れて

2012-10-12 19:53:51 | は行

原発事故が、いかに重く深い傷かがわかって
心にずしーんと。

「フタバから遠く離れて」69点★★★☆

福島県双葉町から、町まるごと埼玉の廃校となった高校に避難した人々を
9ヶ月間追ったドキュメンタリー。

同じ避難所の定点観測でも
「石巻市立湊小学校避難所」とはがらりと違い、
いたってシリアス。

原発、放射能という問題の重さもあるだろうけど
作り手の個性も多分にあると思う。

人々の声も入ってはいるけれど、
対象人数はあまり多くなく、そこまで深くない。

そこには
「原発による風評や差別」の影響もある気がしますね。
つまり
子どもがいじめられたり、結婚が制限されるかもしれないなんて言われるように
「放射能被害にあった」ことを知られたくない人が意外と多いのかも、とか。

で、
一般の声よりも町長の苦悩や、
政治の対応などに軸足を置いている印象があり
ゆえに硬質さや、悪くいえば“重さ”ばかりを感じてしまうのも事実。

それでも
地震や津波に比べて
「私たちは復興できないんだもん」と嘆く人の声はリアルに痛く

町長が
原発に依存し、原発マネーで町が潤った過去を語り、
それを経て
「原発はやはりいらない。誘致は失敗だった」と言う証言など
非常に貴重だと思いました。

置き去りにされ、物言わぬミイラ化した牛たちにの姿こそ、
目に焼きつけるべきメッセージがあるしね。
辛いけどね。

坂本龍一による悲しいピアノ曲もけっこう残る。


見ながら
園子温監督の新作「希望の国」(10/20公開)をまんま思い出したりもして。

同じ題材のドキュメンタリーとフィクション、
合わせて観てもいいかもしれません。


★10/13(土)からオーディトリウム渋谷ほか全国順次公開。

「フタバから遠く離れて」公式サイト
コメント
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