そこらの「思春期ムービー」とは
ちょい違うんだなア。

「ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界」73点★★★★




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1960年代、ロンドン。
ティーンエイジャーのジンジャー(エル・ファニング)

ローザ(アリス・イングラート)は

母親のお腹にいたときからの親友。


いつも一緒に
宗教や政治、ファッションについて語り合う日々だが、
冷戦下での核の脅威を本気で心配するジンジャーと


恋愛体質なローザの間には


次第に溝ができていく。
そして、ジンジャーの思いもしなかった事態が起り――-?!

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「タンゴ・レッスン」(97年)の
サリー・ポッター監督新作です。

愛のベタベタではなく、少女の自立と成長の物語で

キャリー・マリガンの出世作「17歳の肖像」に少し近い印象がある。
いきなり原爆のキノコ雲から始まるのも衝撃で、
しかもほんの数カットのうちに、作者のセンスを感じさせ、
若さのきらめきや、
触れたら消えてしまいそうな“淡い感情”やはかなさを表現しつつ

少ない登場人物の描写が、大変きめ細かいんですわ。



愛に生きる“奔放タイプ”の親友に
なんとかついてこうとする主人公ジンジャー。


詩人を目指し、活動家を目指し、ボーヴォワールに憧れ、
でも夜はクマちゃんと寝る(笑)

このアンバランスさを、
エル・ファニングを素材に
さりげなく、リアルに描き出してます。

ジンジャーの母親は専業主夫で
夫に去られた親友の前では無意識に「勝ち」を意識しているけど、
本音では、自己実現が途中である不満を持っている、とか。

ジンジャーの父親は
思想家で“自由な存在”として描かれ

彼女は自分で、そんな父親の影響を大きく受けていると思っているのだけれど、
そこここで「母親」の血を感じさせるシーンがある、とかね。

父親の前で泣くジンジャーが、
母親とゾッとするほど似てたりとかね。怖いしね(苦笑)。
そういうところが、まあ細かくうまいんですわ。


少女の焦りと、息づかいを感じる詩情の映像に、
単なる「思春期ムービー」以上の共感と
社会性を持たせることに成功した
なかなかの作品ですハイ。

でも副題は無粋な気がする……。
シンプルに「ジンジャーの朝」でいいじゃんね?

★8/31(土)からシアターイメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。
「ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界」公式サイト