ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

東京難民

2014-02-18 23:55:55 | た行

底冷えするこの時期に、
心まで冷え切る、しかも他人事じゃない話はいかが。


「東京難民」70点★★★★


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修(中村蒼)は
どこにでもいるフツーの大学生。

が、ある朝、大学に行くと
「あなたは除籍になっている」と言われ、追い出される。

修の父親が借金を抱えて失踪し、
授業料を滞納していたのだ。

アパートも強制的に追い出され
行くあても、お金もなくなった修は
あるバイトに手を出すのだが――?!

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ごくフツーの大学生が
ほんのつまずきから、あっという間に社会の底辺に転落していく
その過程を描いた作品。

さすが「半落ち」の社会派、佐々部清監督
しっかり作ってあって、

子どもの貧困や、大学中退者の増加する
現代を映す作品であり、

しかも子どもだけでなく
誰もがギリギリの淵に立っているようないまの時代に
誰にでも他人事でなく、かなり胸に痛い映画です。

なにより本作では
若さゆえの無知で、
置かれた状況の厳しさになかなか気づかない
主人公が相当に痛い。

彼のたどる運命によって
我々観客は、ネカフェ難民の実情、ティッシュ配りのコツ
噂には聞いていたけど、ホントにあるんだ薬の治験バイトに
ホストクラブの内情……と、

知ることのない世界の事情を知ることもでき、
かなり勉強にもなりました。

ただ
現実はもっともっとシビアかもしれんし
やや先の読めやすい展開ではある。
けど
そこは、作り手の優しさというか

この現実の端っこでも、広く多くの人に知ってほしいという
メッセージだと受け取りたい。

どん底で出会うホームレスのおっさん(井上順)をはじめ
各所で誰かの助けを借り

少しずつ「人間らしく」なっていく主人公に
絶望だけでなく、少しの希望があるところに
ホント救われました。


★2/22(土)から全国で公開。

「東京難民」公式サイト
コメント (2)
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