今週は高得点ウィーク!
「オーバー・ザ・ブルースカイ」76点★★★★
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アメリカに憧れるベルギー在住の
ブルーグラス・ミュージシャン、デディエ(ヨハン・ヘルデンベルグ)と
全身にタトゥーを入れた
タトゥー・アーティストのエリーゼ(ヴェルル・バーテンス)は
町で出会い、激しい恋に落ちる。
やがてエリーゼは歌の才能を開花させ、
二人は同じステージに立つようになる。
結婚し、娘も生まれ、
幸せだった彼らだったが――。
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本国ベルギーで大ヒット、
各国映画祭で大絶賛!という作品。
ポスターの印象から「イケイケ映画?」と思われた方、
冒頭からの展開にけっこう驚くかもしれない。
冒頭シーンは小児病棟。
彼らの幼い娘が病気になるところから
物語が始まるのだ。
そして映画は
夫婦の火花を散らすような熱い恋があった過去と
二人の関係が引き裂かれつつある現在とを
行ったり来たりして進んでいく。
全体に悲劇といえば悲劇なんだけど、
過去シーンの生き生きとした生の輝きが
すごく素敵で
「喪失を以って、生を知る」鑑賞後感は決して悪くない。
心情と呼応し寄り添う音楽の使い方も
実に気持ちがいいのですわ。
(ブルーグラス、という音楽。実はカントリーに似て、違うものだそう。
詳細は来週発売の『週刊朝日』ツウの一見にて!)
実際に歌ってる主人公たちが
うまくて仰天します。
ほかにも
映像にしまわれた暗示、それを引き立たせるカメラワークも
映画の教科書のように、うまくいってる。
思い返しても鮮烈に蘇るシーンばかりで
たとえば冒頭、
病室で若い母親が
幼い我が子を後ろから抱きしめている場面。
柔らかな光に照らされた二人の顔の角度、髪の色、
目の色までそっくりで
一瞬なんだけど、母娘の絆がそれだけで表され、悲しみの予感が増すんですね。
闘病中の娘が
窓ガラスにぶつかって死んだ鳥を見て動揺するシーンも
幼くして「死」を悟ったその瞬間が映るようで、印象的。
それが後に、
夫婦の決定的に交われない“ある差異”を
浮き彫りにもしたりする。
あの激しく燃えた愛は、どこに行ってしまったのか。
それを描く作品は多々あれど
この映画に描かれるその経緯と理由はけっこう深かったですねえ。
音楽もいいので、ぜひ!
★3/22(土)から渋谷・ユーロースペースほか全国順次公開。
「オーバー・ザ・ブルースカイ」公式サイト