ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

幸せのありか

2014-12-11 23:56:37 | さ行

きっと想像と違うと思う。
けっこうおすすめ。


「幸せのありか」72点★★★★


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1980年代のポーランド。

体が不自由で、言葉を発することができない幼いマテウシュは
医師から「植物のような状態」と言われたが
家族の愛情を受け、成長していく。

だが、大人になったマテウシュは
あるとき病院に入れられてしまい――。

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実話から生まれたポーランド映画。

障害を持った少年が人々と出会い、成長していく・・・というストーリーなんですが

泣かせ映画じゃなく、甘くもなく。
意外なラストに、満足感が残る。

まずは

「潜水服は蝶の夢を見る」
をイメージするとよいかもしれません。



脳性麻痺の障害を持った主人公マテウシュ。

体を自由に動かせず、声を発することもできない彼は
医師から「知的障害があり、こちらの話も通じていない」と診断されている。


本人の内なる声が
「自分にはちゃんと通じてるんだよ」と心境をモノローグで語るんですが、
これは映画だからこその“演出”なんだろうなと最初は思うし、
当然、周囲には伝わらない。


不自由な肉体が感じさせる
もどかしさは相当なもので

ワシもはじめは言葉の通じない動物に接するがごとく、
いたわりの目で彼を見ていました。


マテウシュの一番の理解者であるパパが
障害なんて気にもせず、ほかの子どもたちとマテウシュに分け隔てなく接する様子には
本当に頬がゆるむし。


でも、優しく、悲劇が起こっていく。

パパはいなくなり
マテウュの初恋は意外な形で終焉。

やがて彼は病院施設に入れられ、
ある女性に出会うんですがこれにも悲しい結末が待っている。


が、しかし。
それでもこの映画はへこたれないんだなあ。


彼の内なる声が、実は空想やファンタジーではなかったのだと
ラスト近くでわかるのだ。

ある人物によって自分の意志を表す手段を得た彼は
解放され、
さらにその先に進んでいくんです。


決して悪気はなくとも
障害を持つ人に無意識に向けている
「大変そう」という微妙な気持ちが
クルッとひっくり返って、こちらを見返してくる感じというのかなあ。

なんか爽快感がありました。


★12/13(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「幸せのありか」公式サイト
コメント
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