なんだろう、いいんですよこの映画。
「愛しき人生のつくりかた」73点★★★★
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ある秋の日のパリ。
大学生の青年が、墓地を目指して走っている。
彼の名はロマン(マチュー・スピノジ)。
祖父が亡くなったため、その葬儀に駆けつけたのだ。
伴侶を失ったマドレーヌおばあちゃん(アニー・コルディ)は
やはり寂しそうだ。
おばあちゃんの長男で、ロマンの父であるミシェル(ミシェル・ブラン)は
先日、定年を迎えたばかり。
最近、母とギクシャクしているらしい。
そんな3世代それぞれに、ちょっとした事件が起こり――?
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格別、大事件は起きない。
でも優しくて、サクサクとテンポよく、やわらかく、
笑いはピシッと効いている。
フランスの“よき庶民”の暮らしを
そっとのぞいたような
楽しさがありました。
ここには難民問題もテロも出てこない。
それは大事だし、確かに“いま”なんだけど
でもそればっかりでも、映画も人生も灰色になってしまう。
ときにはこういう
笑えて、ホクッとする映画が見たいものなんです。
そしてこの映画、
やっぱりかなりうまく出来ているんですね。
三世代の物語を同時進行させていく
さばき方もうまいし、
笑いのセンスがいい。
マドレーヌおばあちゃんがミシェルら3人の息子たちに
85歳のお祝いにレストランに連れていってもらうくだりで
息子たちが盛り上がってるのに
おばあちゃんは「ああ、また〇〇の店ね」とか
さらーりと落胆する。
あ、もしかして
ファミレスレベルのところなのか?とか思ってしまう(笑)
監督は俳優でもあるジャン=ポール・ルーヴ。
ロマン青年がバイトするホテルの主人役も演じていいて、
この人がまた、いいキャラなんです。
勤務中のロマン青年に
「そんなに気張らなくていいから、飲もうよ」みたいにして
やたらとボジョレーだのムルソーだの、
ロゼはどうだのと勧めてくる。
本当はさ、自分の息子と飲みたいんだねきっと。とか。
余白のところに
そんな「フフフ」を感じさせるのがいい。
それにですね
おばあちゃんに優しくしてくれる孫って
子ナシの身には、若い恋人よりあり得ない究極の理想なんですよ(笑)
ロマン役のマチュー・スピノジ君も
ちょっとぼさっとしててカワイイんだよね。
ほくっ、としたいときに
おすすめな映画です。
★1/23(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。
「愛しき人生のつくりかた」公式サイト