これは忘れない映画。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」80点★★★★
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アメリカ・ボストン州の郊外。
リー(ケイシー・アフレック)は
方々の家に行き、淡々と電球を替え、トイレを直す便利屋。
一見“フツーの男”のような彼だが
どうも、(いやあきらかに)なにかワケがありそうだ。
そんな彼に、
地元マンチェスター・バイ・ザ・シーに住む兄が倒れたという
知らせが入る。
地元に戻ったリーは
兄の息子、16歳のパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の
面倒を見ることになる。
だが、彼にとってそれは
過去のある出来事と向き合うことでもあった――。
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祝・アカデミー賞、脚本賞!そして
ケイシー・アフレック主演男優賞!
いや~、しみた。
喪失や痛みを描く映画は数多いけれど
なぜ、この映画が忘れられないものになるのか。
月並みかもしれないけれど
そのすべてが“映画であってこそ”もたらされるものだから、と思うんです。
色あせた海辺の町、きしむボート、水音。
過去シーンと現在のシーンに継ぎ目がなく
慣れるまで、ちょっと不思議なリズム。
ケイシー・アフレックの背中や
ミシェル・ウィリアムズのあの表情。
(マジに、あの数秒に泣かされた!)
ストーリーというよりも
映画のエッセンスや、感じた痛みが、映像と空気をともなって
鮮明に思い出されるんですよね。
ある悲劇に責任を感じ、自分を許せず、
楽しむことも感じることも、禁じてしまった男。
過去と現在をいったりきたりしながら
彼の抱えている“もの”が、徐々に明らかになっていく構成が巧みで
彼の苦しみが、ささくれた痛みが、
ひたひたと伝わってくる。
そんな彼が、16歳の少年の面倒を見ることになり
そこから、ほんのわずかに、光が射しはじめる。
この少年と、リーとのやりとりがおかしく
ときに吹くこともあり(笑)
こんなに重苦しい題材なのに
映画をライトに乾いた感じにしているんですよねー。
そこが、いい。
まあ、とにかく
観終わると、記憶のなかに、
ピリッと痛む悲しみとともに、あの町の風景が刻まれる――という案配です。
応援コメントにも参加させていただきましたが
ホント、このタイトルってバンド名みたいじゃない?(笑)
最近、あまりバンド名にしたくなる映画ってないから
この映画は、絶対にセンスはずさないと思います。
★5/13(土)からシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国で公開。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」公式サイト