ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

2017-05-24 23:49:53 | は行

まぶしい。
まぶしすぎて痛いほどだ。


「光」74点★★★★


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美佐子(水崎綾女)は
視覚障がい者に向けた「映画の音声ガイド」をしている。

音声ガイドは、映像を言語化するのが仕事。
「場所」「主人公の身なり」「表情」そして「心境」までも
言葉にしなければならない。

ある日、彼女は音声ガイドのモニターに来た
弱視のカメラマン雅哉(永瀬正敏)と知り合う。

彼の鋭く、遠慮ない指摘に「むっ」とした美佐子だが
次第に、雅哉の写真に惹かれていく。

だが、雅哉の視力は、確実に失われつつあった――。


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河瀬直美監督×永瀬正敏が「あん」に続き、再タッグ。

視力を失いつつあるカメラマンと女性の邂逅を描き、
しかし“お涙頂戴”な想像を、軽く越えますんで、
ぜひ、おすすめです。


まず
画面から溢れる光が、観客の目を射る。
まぶしくて痛いほどで、
これ、日光を撮るのに、かなり危ない
ギリギリの線では?と思うほどですが(笑)。

でも、その「光」は
それを失いつつある人の、最後の光であり
映画に必要不可欠なものなんです。


さらに、この映画の出色は
映画を言葉で説明する“音声ガイド”という仕事を取り上げたこと。

見ると、光の洪水よりも
まずヒロインの発する言葉の洪水にクラクラする。

音声ガイドとは、
画面に出てくるあらゆる物や人の特徴、動作、
「登場人物が、そのときどう思ったか?」の心情までを
すべて言葉に変換する仕事で

言葉が多すぎてもダメ、少なすぎても伝わらない。

むっずかしそう・・・


最初に彼女のつけたガイドで映画を見た
永瀬氏演じるカメラマンは
「(障がい者を)『助けてあげよう』という思いが余計だ」と言うんですね。

でもここで、彼女は
「そっちこそ、想像力がない」と言い返す。

ここで観客は「お!」となると思うんです。


彼女は実に直截なキャラクターで、
障がい者にも、はっきり物を言う。

彼女は(無意識かもしれないけれど)
「共感なんてできっこないほどの不幸を背負った人」に、
わかったような顔をしないんですね。

真っ正面から対等に、相対しようとする。

その様子がぶっきらぼうでも、すがすがしく清らかで、
そこがいい。

彼女のまっすぐな光が、
閉ざされたカメラマンの心を照らしていくんです。

障がいを持った人に、どう向き合うべきか。
その痛みを想像するとはどういうことか。

この映画は個人の感情を深く潜りつつ、
観客の、社会のまなざしをも射ている。

見事だと思います。


“逃げなかった”ラストも素晴しい。

カンヌではスタンディングオベーションだったそうですが
私も立ち上がって拍手いたします!

そうそう
映画com.さんでも、応援レビュー書かせていただきました。
追っつけ見られるのでは、と思います~


★5/27(土)から全国で公開。

「光」公式サイト
コメント
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