社会派かな?と思うと
画面に常に漂う、何かの「気配」――。
「君はひとりじゃない」71点★★★★
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今日も悲惨な事件現場で
死体を検分している検察官ヤヌシュ(ヤヌシュ・ガヨス)。
数年前に妻を亡くしてから
娘オルガ(ユスティナ・スワラ)と二人暮らしだが
妻のいなくなった空白はいまだ埋まらず、
娘は摂食障害を患っていた。
ヤヌシュは娘を入院させ、
彼女はそこで
リハビリ担当するセラピストのアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)と出会う。
実はアンナにはある能力があった――。
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第65回ベルリン国際映画祭で銀熊賞受賞の
ポーランド映画。
妻を亡くした父と、その娘が
あるセラピストと出会う話で
見る前、なんとなく
ダルデンヌ兄弟系の人道的社会派リアリズムを超!勝手にイメージしてたんですが
いやあ、全然違うんですよ(笑)
不思議な映画でした。
例えば。
冒頭、検察官である父親ヤヌシュが
首吊り死体を検分に行く。
検分後、遺体を下に下ろすと、
その遺体がなんと起き上がり、歩き出すんですよ!
でもね、ここで
「ええ?!事件だ!」とかにならず
夢なのか、死んでなかったのか、都市伝説的なおとぎ話なのか?
まったく不明のまま
物語はフツーに進んでいく(笑)
で、ヤヌシュには
摂食障害を抱えた娘がいる。
そしてもう一人の登場人物、
摂食障害の患者たちにセラピーを行う療法士が登場。
彼女の特殊な能力が徐々に明らかになり
そして、接点のなかった3人がつながっていく――という具合。
説明ナシ、はヨーロッパ映画じゃ普通だけど
その空白を「なにかの気配」が埋めている感じが
なんともいえない味なんです。
いってみればホラーに近く、
容易な「心に傷を持った人が癒やされていく」展開などとは違っていて
静か~に、度肝を抜かれるというか。
この独特の空気は、ポーランドのお国柄なんでしょうかね。
でもたしかにヒューマンドラマであり。
そしてラストが、とてもよいんですよ。
印象的な
セラピスト役のマヤ・オスタシェフシカは
アンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」に出てます!
★7/22(土)からシネマート新宿、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
「君はひとりじゃない」公式サイト