77分に素晴らしいきらめきとドラマが詰まってました。
「ブランカとギター弾き」72点★★★★
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フィリピンの路上で
盗みや物乞いをして暮らす孤児の少女ブランカ(サイデル・ガブテロ)。
彼女はあるとき
お金で「お母さん」を買おうと思いつく。
街で盲目のギター弾きピーター(ピーター・ミラリ)と出会ったブランカは
その演奏に合わせて歌い始める。
そして彼女の歌声に目をとめたレストランのオーナーが
二人を雇い、店で歌わせてくれることになった!
だが、ブランカには試練が待っていた――。
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「オン・ザ・ミルキー・ロード」の公開も待たれる
エミール・クストリッツァ監督に見出された
長谷井宏紀監督の長編デビュー作。
マニラの路上で暮らす少女と、
盲目のギター弾きの物語で
役者も撮影もフィリピン、
出資はイタリア、というグローバルな作品です。
決して大仰でなく、しかし端的な描写で、
孤独なストリートチルドレンの少女ブランカの成長が描かれ、
77分という尺に
想像以上のきらめきとドラマが詰まっていました。
路上で窃盗も働きながら
誰も信じず、ヤマアラシのように身を守って生きる少女ブランカが
盲目のギター弾きと出会い、
同じ境遇の少年と出会い、
盗みや狡(こす)い行いで人を蹴落とすことでなく、
人と助け合い、ともに暮らすことの尊さを学んでいく。
そんなブランカが
実にたくましく、可愛らしいし
彼女を誰が助けてくれるのか、誰がより狡い行いをするのか、
ドラマが練られていてハラハラです。
なかでも
ワシがもっとも注目したのが、子どもたちとお金の関係。
ブランカも路上の子どもたちも
ゲットした紙幣を数え、貯め込んでいるんですね。
お金は彼らにとって“価値観の最上級”であるのは間違いないんだろうけど
実のところ、彼らがそんなに執着しているようにも見えなくて。
隠し場所もずさんだし、ほかの子や人に盗られてしまえば終わり。
その様子を見ていると、
彼らにとってそれが、まるで野球カードを集めているのと変わらない
無邪気な情熱にもみえてくる。
実際、路上でお金があっても
子どもである彼らにできることは少ないんですよ。
きっと子どもたちは
本当に自分に必要なのは、お金で買えないもの――家族や庇護者、権利、自由なんだと
本能で知っているんだ、と見ながら感じた。
監督は実際にスラムに身をおき、
子どもたちをサポートする活動などを続けてきた方だそうで
彼らをしっかり知っているからこそ、
その感覚が、リアルに伝わってきたのだと思いました。
★7/29(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。
「ブランカとギター弾き」公式サイト