ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ロープ/戦場の生命線

2018-02-05 23:39:58 | ら行

なかなかおもしろい
鑑賞後感があります。


「ロープ/戦場の生命線」71点★★★★


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1995年、停戦直後のバルカン半島。

いまだ緊張漂う紛争地域で、
現地の人々に水を提供する
「国境なき水と衛生管理団」のベテラン職員マンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)と部下たち。

彼らは
「井戸に死体が投げ込まれた」と聞き、
それを引き揚げるために、ある村へやってくる。

だが、死体の引き揚げに使うロープが
途中で切れてしまった。

マンブルゥは仲間のビー(ティム・ロビンス)らとともに
ロープを手に入れようとあちこちを探すが
これが、まるでたちの悪いジョークのように
なかなか手に入らない。

そのうちに彼は
昔ちょっとワケありだった
国連軍のカティヤ(オルガ・キュリレンコ)と顔を合わせることになり――?!


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ボスニア・ ヘルツェゴビナなどを有し、
混乱多きバルカン半島。

1995年、そんな停戦直後のバルカン半島で
危険を顧みずに活動する
国際救助隊の面々が遭遇する出来事を描いた作品です。


あちこちに地雷が埋まっている
危険地帯のハラハラや
現地住民たちとの一触即発な空気など

シビア要素は十二分にあるのですが

これが意外なほどに
カラッと乾いたユーモアがある。

デル・トロのひょうひょうさ、
ティム・ロビンスのブラックユーモア。


しかも
男女のゴタゴタとかも入ってきて
不思議なコミカルさもあるんです。


監督は紛争地帯で何度も取材経験があるそうで
実際に現地ではこうしたユーモアやジョークが
ひんぱんに行き交うらしい。


そうでなくちゃいられない、その心情。
なるほど
これが「人道支援のリアル」なんだと思う。


国連とは別途に動く、救助隊の活動は
本当に「究極の人助け」というか
こんな危険地帯で
「人の役に立ちたい」という思いなくしては
活動できないはず。

しかし、それゆえに彼らには
現地でのままならない感、虚無感も大いにあると思う。

そんな現場を知る人ならではの
リアリズムが、じわじわと効いてきて、

さまざまを考えさせつつ、
「いまも現場に、こういう人々がいるのだ」ということに
せめて想いをはせることが
いま自分にできる、精一杯のことでありました。


★2/10(土)から新宿武蔵野館、渋谷シネパトスほか全国で公開。

「ロープ/戦場の生命線」公式サイト
コメント
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