ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ナチュラルウーマン

2018-02-20 23:54:13 | な行
「グロリアの青春」(14年)監督の新作。
心にギュッ!とくる。


「ナチュラルウーマン」79点★★★★


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チリ、サンティアゴ。

ウェイトレスをしながらナイトクラブで歌う
トランスジェンダーのマリーナ(ダニエラ・ヴェガ)。

そんな彼女を客席から見守っているのは
年の離れた恋人オルランド(フランシス・レジェス)だ。

その夜、マリーナの誕生日をともに祝った二人は
ラブラブのまま帰宅するが
深夜、オルランドが突然、体調を崩してしまう。

そして緊急搬送された病院で
オルランドは息を引き取ってしまった。

あまりのことに呆然とするマリーナに
警官は、身分証の提示を求め、
事件性を疑う。

さらに、オルランドの元妻や息子から
連絡が入り――?!


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パートナーを突然亡くしたトランスジェンダー、
マリーナの闘いを描いた作品です。

主演は自身もトランスジェンダーである
ダニエラ・ヴェガで
彼女の存在感とその説得力が、最大のキモ。

逆風の中をゆく彼女の痛みや強さが
ビシビシ伝わってくる!


予想ではもう少しユーモラスな雰囲気だったんだけど、
けっこうきっちり痛くて、

でも
「グロリア~」を思い出させるようなシーンも多々あって
やっぱりセバスティアン・レリオ監督ってうまいと思った。

痛さや現実を容赦なく
生々しく描きながらも
ユーモアと光があるんですよね。


しかしほんとにこれ、実に今日的な問題ですよ。

LGBTに限らず
"結婚”という法的な保護のないカップルは
いろいろなことを、きちんとしておかないと!っていうよい教訓。


相手が突然亡くなった場合、
マリーナのように
相手の家族に葬儀にも出席させてもらえなかったり
家を追い出されたりしてしまうことは
日本でもよくあると聞くし、

なにより、庇護者を失ってひとりぼっちになってしまう
彼女の心細さよ!


まあ、優しい理解者もいるんですけどね。

そこにまたグッとくるんだよなあ。


冒頭シーンも、何から始まるかと思えば、
「ああ、なるほど」と、ちゃんと編まれていく。

ストーリーが、流れながら巡り合っていくような
こういう編み方、海外作品はやはりうまいなあと感じます。

ときに観客の期待を
フッとかわすあたりも絶妙で、たまりません(笑)


★2/24(土)からシネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBUSU GARDEN CINEMAほか全国で公開。

「ナチュラルウーマン」公式サイト
コメント
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