シャーロット・ランプリング主演。
そりゃ、観るしかない!と行くと衝撃かも。
「ともしび」72点★★★★
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ベルギーの小さな街に暮らす
初老の女性アンナ(シャーロット・ランプリング)。
いつものように夫と静かな夕食を囲んだ翌朝、
二人はある場所へ向かう。
そして、そのまま夫は帰ってこなかった。
ひとり家に帰ったアンナは
飼い犬に餌をやり、演技クラスに通い、プールで泳ぎ、
淡々と普段の生活を続ける。
が、その日常に生じた、かすかなひびわれは
じわじわと、彼女を侵食してゆく――。
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シャーロット・ランプリング主演。
老境にさしかかった女性の心象を描く点で
「まぼろし」(00年)、「さざなみ」(15年)の系譜につらなる、というのは
確かにそうなんだけど
そりゃ観るしかない!と、いさんで行くとけっこう衝撃かもしれない。
1982年生まれのアンドレア・パラオロ監督のアプローチは
かなり実験的というか、野心的なんです。
ギョッとさせる冒頭からして、挑戦的だしね。
老夫婦の夫が、ある朝どこぞに行き、そのままいなくなる。
その後は彼女一人の暮らしが淡々と続く。
なぜそうなったのか、なにがあったのか
なにひとつ説明されない。
セリフもほぼなく、究極にそぎ落とされ
そのなかで、身ひとつをさらしているのが
シャーロット・ランプリングなんです。
まあ、なにがあったか、おおよその見当はついてきます。
夫はどうやら何かの罪で収監されたらしい。
そのことで彼女は息子家族たちにも拒絶され、孤立していく。
さらに彼女のまわりからは
プールの会員権が消え、犬が消え、あらゆるものが失われてゆく。
枯れる花、プールの更衣室、浜に打ち上げられたクジラ――など
老いと若さの比較や、死のイメージも繰り返される。
意地悪いほどに突きつけられる「現実」のなかを
語らず、硬質な表情のまま、感情を見せず、ひとり歩く彼女の全身に
人生や老いなど、誰もに共振するテーマが映り込む。
それがひんやりと、静かに響くんです。
実際に肉体をさらすシーンも、ハッとさせて忘れがたく
なんだか全体的に
彼女の身体パフォーマンスアートを観たような感覚にもなりました。
シャーロット・ランプリングとイザベル・ユペールは
ワシにとって、もはや生きるための勇気であり、希望であり指針なんで、マジで(笑)
★2/2(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。