「家の鍵」のジャンニ・アメリオ監督。
容赦ない。
「ナポリの隣人」72点★★★★
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南イタリア、ナポリ。
老人ロレンツォ(レナート・カルペンティエーリ)は
街中のアパートに独りで暮らしている。
妻はすでに亡くなり、
娘(ジョヴァンナ・メッゾジュルノ)や息子との関係も冷え切っていた。
そんなある日、ロレンツォは
若い女性ミケーラ(ミカエラ・ラマッツォッティ)が
アパートの階段に座っているところに出くわす。
最近、幼い二人の子と夫と向かいに越してきたというミケーラは
鍵を忘れて、家に入れずにいた。
ロレンツォは彼女を家に招き入れ、
向かいとつながっているバルコニーを開けて、彼女を家に入れてやる。
そんな縁で、ロレンツォは彼女の家族と
つかの間の交流を始めるのだが――?!
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「家の鍵」(04年)や
カミュの「最初の人間」(11年)など
人間を描いてきたイタリアの名匠ジャンニ・アメリオ監督の新作です。
偏屈じいさんの向かいに越してきた若い家族。
まあ普通なら
お隣との交流を通じて、じいさんにちょっとした変化が――?とかにいきそうなものですが
いや、ここには、安易な心の通じ合いなどないのです(キッパリ)。
じいさんも、若い家族も、じいさんの本当の家族も
誰もが心を真に明かすことはなく
触れ合いそうで、触れ合えない。
そんななか、「えっ?!」という事件が起きる。
クールなまでに容赦ない描き方なんですが
まあ、それが実際だよな、と思わずにいられない。
実際、ニュースでまさにいま
「いいお父さん」に見えていた人が子どもを殺しているのが現実ですから。
人と人とは、安易に通じ合えない。
人の心は簡単にはわからない。人と人は簡単には通じ合えない。
そのもどかしさ、コミュニケーション不全は、
まさに現実を生きる人間の息遣いそのもので
そのリアルが、
心にしみじみと深い波紋を残すんです。
そして、こんな世でも最後に、ごくごく薄く残るものが
「希望」だと信じたい。
と、思うのもまた、人間なんだろうな、と。
監督はすべてをわかっているようです。
★2/9(土)から岩波ホールほか全国順次公開。