ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

クリスマス・ストーリー

2010-11-21 00:29:04 | か行
なんとも豪華で大人な
出演者たちによる
ゴージャスなクリスマスのお話です。


「クリスマス・ストーリー」79点★★★★


フランス郊外の街。

クリスマスを控えたある日
一家の母(カトリーヌ・ドヌーヴ)に
白血病が見つかる。


そしてクリスマス前夜。
母の病気をきっかけに
疎遠にしていた子どもたちが集まってくる。

しっかり者の長女(アンヌ・コンシニ)に
問題児の次男(マチュー・アマルリック)。


そして
姉弟の仲介役である三男(メルヴィル・プポー)と
その妻(キアラ・マストロヤンニ)。

久々に再会した一家のなかでは
隠されていた秘密も飛び出し

さてさて、何が起こりますやら
クリスマス・ストーリーのはじまりはじまり……。


「病気」を発端にはしていますが
暗くもなく、重くもなく

濃厚かつ軽妙、
かつこの時期にピッタリ、という
フランスらしい家族ドラマです。

ナニはさておき
まず俳優が豪華!

カトリーヌ・ドヌーヴをはじめ
「華麗なるアリバイ」のアンヌ・コンシニに
「潜水服は蝶の夢を見る」のマチュー・アマルリック。


「ぼくを葬る」のメルヴィル・プポーに
ドヌーヴとマルチェロ・マストロヤンニの娘
キアラ・マストロヤンニ。

「そして僕は恋をする」の
エマニュエル・ドゥヴォス……


最近のちょっと「センスのいい」
フランス映画を見ていれば
絶対に「あ、知ってる」という顔が
ズラリと揃ってます。

そんな彼らと2時間半、
家族の一員になったかのような
クリスマス時間を過ごせる
ちょっと他にない映画ですね。


テーマ自体は
クリスマスに集まったワケあり一族……という
定番色を持ちつつも

才人アルノー・デプレシャン監督の演出は
まったく型にはまらない。

登場人物がいきなり
画面に向かって独白してみたり

節目節目になにか
ひっかかりがあるような
妙なつなぎかたなのに

しかし中盤からしっかりと
うまくまとまってゆくんです。


セリフのセンスがいいので
姉弟ゲンカも
うっかり(?)聞き入ってしまうような感じでした。


キーワードは「血」。
骨髄移植の血であり、血縁という意味でもあり。

大人のクリスマス映画です。
おすすめ。

★11/20から恵比寿ガーデンシネマで公開中。ほか全国順次公開。

「クリスマス・ストーリー」公式サイト

余談ですが
週刊朝日記者・今田俊さんが
自身の白血病の記録を綴った
『無菌室ふたりぽっち』(朝日新聞出版)という本がありまして


決して暗くなく、グイグイ読めるのに
グッとくる
すごくおすすめな本のですが

後半のまるで小説のような展開に
この映画と符号するところがあって
見たあと、番長はなんだか
勝手に感じ入っておりました。

ご興味あるかたはぜひ
手にとってみてください。
コメント (4)
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黒く濁る村

2010-11-17 20:45:34 | か行
謎や秘密を持ちかけられると
人はなんでこう「知りたい!」って
なっちゃうんでしょうねえ。。

「黒く濁る村」70点★★★


舞台は現代。

青年ユ・ヘグクは20年も疎遠だった
父親の訃報を聞き
ソウルから遠く離れた
ある山奥の村にやってくる。

その村で父は人々に慕われ
教祖まがいのことをしていたらしい。

だが村長をはじめ、
村人はどこか挙動不審で
ヘグクを村から遠ざけようとする。


父はなぜ死んだのか?
そして村に隠された秘密とは――?


原作は韓国でウェブ連載され
大ヒットとなったマンガ。

それをもとに
「シルミド/SILMIDO」のカン・ウソク監督が映画化した
サスペンスです。

166分もあるんですが
これが意外と惹きつけられちゃいました。


閉鎖された村というモチーフや
狭い世界でのドロドロ人間関係など

ウェブマンガという媒体にしては
素材はオーソドックスでクラシック。

でもやっぱり
怪しさの尻尾をチラチラ見させられたり
意味ありげな「謎」を持ちかけられると
どうしても
体が反応してしまうんですねえ。


父の秘密を探る息子
無意識のうちに
父の“ある素因”が微妙に継承されていたりするあたりに

韓国らしい“血脈”感覚が
現れているなあと感じました。

シビアななかに
これまた韓国的な
息抜き笑いもちゃんとあります。


ただ
ミステリーなので
あまり言うとヤボなんですが
見終わってみると
「え?こんなに華奢な骨格に、こんなに肉を盛ってたのか!」
という感じも。


ちょっと評価は分かれそうですが
謎に翻弄された後味は
悪くなかったです。


あと
「物を盗むのはただの悪党。
本物の悪魔は“心”を盗むものだ」が
印象的なセリフでした。

でもどこかで聞いたことあるよなあ。
・・・まさか、カリオストロの城?!

★11/20から全国で公開。

「黒く濁る村」公式サイト
コメント (2)
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ハリー・ポッターと死の秘宝PART1

2010-11-15 20:49:38 | は行
いよいよ、ですぞ!

「ハリー・ポッターと死の秘宝PART1」80点★★★★

10年あまりに及んだ
ハリポタシリーズ、
2部構成の最終章のパート1です。


ハリー(ダニエル・ラドクリフ)、ロン(ルパート・グリント)
そしてハーマイオニー(エマ・ワトソン)の3人は

いよいよ憎っくきヴォルデモート郷(レイフ・ファインズ)との
最終決戦へ。

ヤツを倒すには
その魂の断片を入れた
7つの分霊箱を探し出し、破壊しなければならない。

7つのうち「トム・リドルの日記」
ハリーが2作目で破壊。
「指輪」は6作目でダンブルドア校長が破壊し
残るはあと5つ。


追っ手がせまるなか
残された時間でハリーたちは
分霊箱を見つけ、破壊することができるのか?!


見終わってまずひとこと
……燃え尽きました……。

いままで以上の映像スケールに
かつてないほどの追い詰められ感。

頼れる大人はほとんど登場せず
ほぼ2時間半、ハリーたち3人が出ずっぱり。
緊張させられっぱなし。

終わるころにゃすっかり
「名前もいえないあのお方……ぶるぶるぶる」って
感じになってました。なさけねー。


映像以上に感慨深いのは
やっぱりそこに立ってる成長した役者たち。

あんな小さかった彼らが
こんなに魔法が使えるようになって……
いや、こんなに芝居をしてるなんて……うるうる。







完全に「北の国から」状態ですよ(笑)


この映画の見方は
もうフツーじゃないです。よくわかってます。
でも、こんなに長くシリーズを見続けられる
クオリティだって、やっぱりフツーじゃない。

同時代に体験できて幸せです。

原作をあえて読まずにがまんして10年、
同じ思いの方々のためにも
あえて多くは語りたくないし、ヤボってもんです。

ぜひ、楽しんできてください☆

PART2は2001年7月15日公開っていうんだけど
それまで体力、持つかなあ。
早く見せて欲しい!


★11/19から全国で公開。

「ハリー・ポッターと死の秘宝PART1」公式サイト
コメント (2)
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ふたたび

2010-11-13 15:36:40 | は行

人の行いは正しいのが一番だけど
映画はそれだけだとツマラナイ。


「ふたたび」51点★★


舞台は神戸。

ジャズ好きの大学生ヒロト(鈴木亮平)
ある日、父(陣内孝則)から
意外な話を聞く。

亡くなったと聞かされていた
祖父が生きており
この家に引き取るというのだ。

「なんでウソをついていたんだ?」
と問いただすヒロトに
父はこう言った。

「おじいちゃんはハンセン病だったんだ」

……は?ハンセン病って何?

そしてヒロトは祖父(財津一郎)と
初めて対面することになる・・・


冒頭に「厚生労働省推薦映画」の
文字がバーン!と。

これ、ちょっと強烈すぎて
映画全体の印象を
決定づけてしまう感あり。

そしてその印象通り
なにやら教習所で見せられるような
“教育的”な映画でした。


ハンセン病の誤解と歴史を
ほどこうという意図と目的は大切だし
よくわかりますが

あまりにも折り目正しくて
情緒の入る隙がないんだなあ。


「人生、やり残したことありませんか」
というコピーといい
ジャズという小道具といい


年配層にはウケそうですが
本当にこういうことを知ってもらいたかったり
訴えるべき相手は若い人なんじゃないか?

そこに伝わりにくそうな感じが
もったいないんですよねえ。


でも、これは監督のカラーなのかもしれない。
前作「0(ゼロ)からの風」も
同じような印象があった。

交通事故で息子を失った実在女性が
「危険運転致死傷罪」の新設のため戦う映画で
ものすごく大事な話だったけど

やっぱり、教育っぽかったもんなあ。


どんなに不良っぽくしても
シャツにきっちりアイロンかかってるよ……みたいな
かたなのかもしれませんね。


ただそのへんの印象を体現した
主演の鈴木亮平が
すごくよかった。

若いのに真っ直ぐで
困った人にちゃんと手を差し伸べるような
気骨ある青年を自然に演じていました。

後半の彼と祖父の旅は
ちょっとしたロードムービーのようで悪くない。


あとはやっぱり
ある役で登場する渡辺貞夫氏の
サックス演奏が見どころですね。


★11/13から全国で公開中。

「ふたたび」公式サイト
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劇場版3D あたしンち

2010-11-12 11:28:46 | か行
やること自体がギャグなの
わかってるんですけどね……。

「劇場版3D あたしンち」28点☆


母、父、娘みかん、弟ユズヒコの
4人家族の「あるある」な日常を描いて大人気の
コミック「あたしンち」の映画版です。
(シリーズ累計1000万部超!)


今回は母が雷に打たれて
超能力を身につけちゃう……という
エンタテイメントなお話。

しかも3D(笑)

もうホント、それだけで
話題性ありというか、ネタになる感じです。

番長もついつい誘われて
見てきました。

ポケモンとか名探偵コナンとかクレヨンしんちゃんとか
「子ども向け」の仮面をかぶって
けっこうハラハラしたり
素直に「ジ~ン」としちゃったり
クオリティに驚いたりすることあるんですが

これは……どうなのか?


まず、上映時間43分て……短っ!
ホントに「あっ」という間です。

それにいつもどおり平面の母を
3Dで見るてやっぱり……(苦笑)

紙を何枚にも重ねて奥行きを出す
仕掛け絵本的な雰囲気ですねえ。

まあ、それはそれとして
ほかに「あたしンち」らしい
クスッと笑いもあるんですが

とにかくあまりの
内容のなさにあ然……。

もうちょっとしっかり作って欲しいなあ。
フツーに日常ネタ数本立てでも。ねえ?


まさかこれで1800円+メガネ代とかあり?
思わず劇場に電話しちゃったんですが

TOHOシネマズは
高校生以上1100円(3Dメガネ代込み)

3歳~中学生&シニア900円

だそうです。

んんん~~大人も900円がギリかなあ。
ソフトドリンクMくらい込みで。

そのくらいなら
買い物の合間に休憩もかねて、で
OKですかね。

★11/13から全国で公開

「劇場版3Dあたしンち」公式サイト
コメント (2)
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