ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ギフト 僕がきみに残せるもの

2017-08-17 22:13:48 | か行

“難病もの”を越える
「父と子」テーマがいい!


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「ギフト 僕がきみに残せるもの」75点★★★★


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難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を宣告された
元アメフト選手のドキュメンタリー。

つらい難病テーマには
正直、食指が動きにくい人もいると思うけど
これは見ないともったいないと思う。

「病気に立ち向かう」だけでなく
「父と息子」という視点にこだわった点で
実に意味がある映画なのです。

それにね、明るいんですよ!(笑)
力が湧いてきます。


スター選手でイケメン
愛する妻と幸せな暮らしを送っていたスティーヴ・グリーソンは
ある日「なんか、へん?」と体に違和感を憶える。

そして彼は
あのホーキング博士と同じALSと診断される。

筋肉への伝達神経が侵され、
次第に動くことも、しゃべることもできなくなってしまう難病。

そのショックといったら想像も出来ないけれど
でも、その数週間後に妻ミシェルの妊娠がわかる。


さあ、ここからどうするか?!

メソメソしてる場合じゃない!

スティーヴはまだ見ぬ息子へ
ビデオダイアリーを残すことにするんです。
その映像をもとに、この映画は作られてる。

スティーヴをすごいなあと思うのは
まず、スポーツマンゆえの不屈のガッツがあること。
それを支える、奥さんのミシェルも素晴らしい人物で

二人は笑いながら、泣きながら
苦境にしか思えないような日々を、クリアしていく。

ALSへの理解と支援を呼びかける団体を作ったり
意義ある活動をしながら
奥さんとガチでケンカもする(笑)


なによりスティーヴは
自分が父親となることで
いまいちうまくいってなかった自分の父との関係を見直していくんです。

そんな彼自身と彼の父親の間に起こる変化が、奇跡のように素晴らしくて
見る価値あり!なんですよ。


スティーヴの病状はもちろん深刻で
ときにカメラの前で泣くこともある。

それでも、彼は前に進む。
ユーモアも忘れない。

その姿はどんな人にも
何かしらの勇気と糧を与えてくれると思います。


来週(8/21発売)の『AERA』で
奥さんのミシェルさんにインタビューをさせていただきました。

本当にポジティブで快活なステキ女性。

スティーヴの現在、そして
「彼の原動力がどこからくるのか?」

たくさん伺いましたので
ぜひ映画と合わせてご一読ください~。


★8/19(土)からヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか、全国順次公開。

「ギフト 僕がきみに残せるもの」公式サイト
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ベイビー・ドライバー

2017-08-15 17:58:14 | は行

うっひょう♪ノリノリだぜ(笑)


「ベイビー・ドライバー」74点★★★★


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あどけなさの残る青年ベイビー(アンセル・エルゴート)は
天才的な腕を持つドライバー。

今日もiPodで音楽を聴きながら
超絶なテクニックで運転をする。

だが、彼が乗せているのは
銀行を襲撃した3人組。

ベイビーは
大物犯罪者ドク(ケヴィン・スペイシー)に借りを返すために
危険な仕事を引き受けているのだ。

しかし、その借りももうすぐ終わる。

そんなときベイビーは
可憐なウェイトレスのデボラ(リリー・ジェームズ)と出会い――?!



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「ホットファズ」の
エドガー・ライト監督作品。

えらく前評判よかったんですけど
見て納得!

これはみんな好きでしょう!


運転中もだけど
普通にドアノブを開けたり、とかの動作ひとつひとつが
すべて音楽と連動しているような感じで
そのリズムが気持ちいい。

まさにミュージカル×カーアクション、という
斬新さとフレッシュさ。

しかも
どこかレトロでアナログなテイストがあるんですねえ。

主人公ベイビー役のアンセル・エルゴートは
胸キュン映画「きっと、星のせいじゃない。」に出てた
優(やさ)イケメン君。

80年代ふうのサングラスをかけると
かなりダサめになるところがおかしい(笑)。

んで
カセットテープにミックスを入れたり
その選曲といい
彼がときめくヒロイン(リリー・ジェームズ)彼女が働くダイナーといい
「ボニー&クライドかよ」ってセリフもあるように

どこか
古き良き“ルート66”なムード。


で、主人公ベイビーは
仕方なく悪事に加担してるピュアな若者で

観客は
ヒロインとの淡い恋にキュンとさせられるわ

そんな彼をまっ黒に染めようとする
ホンモノのワルとの攻防にハラハラさせるわ

またワルの大物役で
ケヴィン・スペイシーがズゴーンと存在感出してくれるわ

なんというか
長年かけて育まれてきた
映画の“うまみ成分”が
ギュッと詰まっててるような。

「カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』」と評されたそうで
確かに、そのへんでもリンクがあると思いました。


★8/19(土)から全国で公開。

「ベイビー・ドライバー」公式サイト
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少女ファニーと運命の旅

2017-08-11 21:07:26 | さ行

ハラハラ!

「少女ファニーと運命の旅」70点★★★★


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1943年、ナチスドイツの支配下にあるフランス。

ユダヤ人の少女ファニー(レオニー・ショー)は
二人の妹とともに

親と離れ、同じような子どもたちを支援し、
かくまってくれる組織で暮らしていた。

しかし、誰かの密告により
施設も安全でなくなり、
子どもたちはスイスに逃げることになった。

施設の責任者マダム・フォーマン(セシル・ドゥ・フランス)は
年長でしっかり者のファニーに
「あなたがリーダーよ」と8人の子どもたちを託す。

そしてファニーと子どもたちの
危険な旅が始まった――!


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1943年、ナチスドイツの支配下にあったフランスから
スイスに逃れようとする
ユダヤ人の子どもたちの物語。

実話が基です。


図らずも9人の子どもたちのリーダーとなる
13歳のファニーの

不遜、というのか、
年齢以上の「わかった」感を
主演の少女が堂々と表現していて、とてもいい。

その
意思の強そうな表情とおでこもいい!(笑)


さまざまな視点から無数に語られる
ナチスドイツものですが

本作は
自らも危険な状況で、子どもたちをおそらく「本能で」助けた
無数の心ある人々へ思いを馳せる、という点が光る。

映画自体にも
陽光と子どもたちの明るさがあって

悲劇の歴史を描く筆致としては
サラッとしているかもしれないけど

そのぶん、心にトラウマな傷を残さずに
起こった「出来事」を知ることができる。


子どもと一緒に
「なぜ、この子たちは逃げてるの?」「それはね・・・」と
説明しながら、見ることができると思います。
それって、大事!ですよね。


★8/11(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「少女ファニーと運命の旅」公式サイト
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スパイダーマン:ホームカミング

2017-08-07 23:31:18 | さ行

今夏、大作映画はこれがイチオシ!


「スパイダーマン:ホームカミング」75点★★★★


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アベンジャーズの戦いにスパイダーマンとして参加した
高校生のピーター・パーカー(トム・ホランド)。

やる気だけは満々で
アイアンマンことトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)に
「アベンジャーズに入れて!」とアピールするが
「まだまだ早い」と相手にされない。

しかたなく高校生活に戻った彼は
好きな女の子にドキドキしたり
近所をパトロールしては強盗を防いだりしていた。

そんあるとき、
ピーターは偶然、
アベンジャーズに敵対する巨大な悪の存在を知ってしまい――?!


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いや~かなりおもしろかった(笑)


1981年生まれのジョン・ワッツ監督、
ヒーロー未満な15歳の新スパイダーマンの物語を

青春ドタバタコメディに
高速の最新バトルを組み合わせるという技で
魅せてくれました。


マーベルはシリアスより
こんなふうにコミカルに比重を置いたほうが断然、楽しいなあ。

映画ファンや、オタク向けの要素も
きっちりも取り入れているところもうまいなあと。


アベンジャーズの戦い
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」ね)に参加したピーターが
自撮りしていた、という体(てい)の映像とか・・・(笑)

人々の役に立とうと一生懸命でけなげなピーターに
世慣れた大人代表、アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)が
絶妙に絡んでくるのも笑えるし

ピーターの親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)との
“俺たちスーパーバッド”的なバディぶりも笑える・・・(笑)

それに宿敵(マイケル・キートン)、
これ完全に“バードマン”でしょ?!とか(笑)


こうした“ウケ”ポイントをさまざまに、巧みに使い分けるところが
マーベルの強さなんでしょう。

キャラ立ち、お話ともにけっこうツボりました。おすすめ!


★8/11(金・祝)から全国で公開。

「スパイダーマン:ホームカミング」公式サイト
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山村浩二 右目と左目で見る夢

2017-08-05 14:06:34 | や行

アート絵本のような短編集。

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「山村浩二 右目と左目で見る夢」69点★★★★



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「頭山」(02年)で第75回アカデミー賞
短編アニメーション部門にノミネートされた
世界的アニメーション監督の短編集。


9本の作品が入っていて
全部で77分くらいかな。

「怪物学抄」と「Fig(無花果)」が特に好みでした。


「怪物学抄」は架空の怪物の公文書。
「涙の味」「飼い慣らされた野生」――
とんちとシニカルなユーモアがおもしろくて
必ず「あ、自分だ・・・」と思う怪物がいる。

「Fig(無花果)」は「東京」をテーマに制作された
オムニバスアニメーション用に作ったものだそう。

郷愁を感じさせるトーンと
出てくる“蛇口犬”がかわいくて
ちょっぴり切ない。

「古事記 日向篇」はNHKBSの番組で放送されたもの。
そういう話だったんだ、と改めて勉強になる。


シナモンの利いたクッキーあり、
伝統の干菓子あり、なイメージで
土曜の午後に、ポリポリといただきたいような。


★8/5(土)から渋谷ユーロスペースで公開

「山村浩二 右目と左目で見る夢」公式サイト
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