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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ロスト・イン・パリ

2017-08-03 23:48:33 | ら行

この二人、夫婦なんですよね~。


「ロスト・イン・パリ」70点★★★★


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カナダの田舎町で
図書館司書として働くフィオナ(フィオナ・ゴードン)。

彼女のもとにある日、
パリに住むおば(エマニュエル・リヴァ)から
「老人ホームに入れられてしまう!助けて!」という手紙が届く。

幼いころ、パリに行くというおばに憧れ、
しかし実際は、田舎町から出られなかったフィオナは
一念発起してパリへと向かう。

そこは見たこともない大都会。

だが、おばにも会えず、右往左往するフィオナは
偶然、ホームレスのドム(ドミニク・アベル)に出会い――?!


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「アイスバーグ!」(05年)「ルンバ!」(08年)で知られる
ベルギーの道化師カップル、アベル&ゴードンの最新作。
どっちも見てるし、けっこう好き。

彼らは
パントマイムのような身体表現で、
日常のなかの一コマや、人間のおかしみを描く。

その計算された動きと、展開の滑稽さ、
シニカルな笑いが
けっこうクセになるんです。


今回も死やホームレス、差別などをサラッと描き、
決して「優しい」風味じゃないのに
なんだか、見てると、気持ちがフッとゆるむ。

それに冒頭の
吹雪のカナダの図書館に手紙が届けられる
あのシーンだけでも
パッケージしておきたいほど印象的。

ひょろっとしたフィオナのルックスも
ホントにマンガみたいでおかしいし。
しかも風刺漫画ね(笑)。


まあ歳を言うなんて野暮の極みですが
この二人、1957年生まれ。
ということは・・・か、還暦?!

こんなに瑞々しく“恋する二人”を表現できるなんて・・・!
ああ、夫婦取材したかった!(笑)

実際は別居中、とかじゃないよね?!(ない、ない。笑)


★8/5(土)から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

「ロスト・イン・パリ」公式サイト
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きっと、いい日が待っている

2017-08-02 23:44:27 | か行

このタイトルしかつけようがないよね・・・


「きっと、いい日が待っている」69点★★★☆


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1967年、デンマーク・コペンハーゲン。

13歳のエリック(アルバト・ルズベク・リンハート)と
10歳のエルマー(ハーラル・カイサー・ヘアマン)の兄弟は
シングルマザーの母親とつましく暮らしていた。

しかし、母親が病気になってしまい
二人は児童養護施設に送られる。

そこは上級生からのイジメと
そんなことは知らぬ存ぜぬな教師たち、
そして
限りなく威圧的な校長が巣くう
地獄のような場所だった――。

兄弟は「すぐに母親が迎えにきてくれる」と信じ、
日々を生き抜こうとするが――?!


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1967年、デンマーク、コペンハーゲンの少年養育施設で
実際に起こった事件を基にした作品。

本当にこのタイトルしかつけようがないというか
かなり、つらいです(泣)
困難を描く物語はままあるけれど、
「なかなか救いがない」度合いでは近年稀に見るかも(苦笑)


悲惨な施設に入れられても
「すぐに母親が迎えに来てくれる」と信じ、
なんとか日々をやり過ごそうとする幼い兄弟。

反抗的な兄と、想像力豊かな弟のキャラクターはとてもよくて
特に弟をひたすら守ろうとする、兄貴が切ない。

映画全体もピュアでいいんですが
まあ
とにかく彼らの試練の厳しいこと!

あらゆる希望は打ち砕かれ、頼りになりそうな人は消え
かすかな光は灯りそうになると、フッとあっけなく吹き消される。

そんな状況の繰り返しで
次第に翼をもがれていく兄弟が気の毒で
ちょっとしんどくなってしまいました。


それでも、約2時間を耐えたあとの
展開には喝采!

なにより、これが
さほど昔ではない時代に起こった実話だという重みは
噛みしめなければならないなあと。


★8/5(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「きっと、いい日が待っている」公式サイト
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