米国で今月2日(木)に放送された「ER 緊急救命室」の最終回が、高視聴率を記録した。 ニールセン社によると、米NBCが午後9時から放送した2時間スペシャルの平均視聴者数は1620万人で、18歳から49歳までの視聴者層の16%がチャンネルを合わせていたという。ドラマの最終回としては、2002年に放送を終了した「X−ファイル」以来の高視聴率で、15年目を迎えた今シーズンの平均視聴者数が950万人だったことから、最終回だけ視聴者が急増した計算になる。
これほどの注目を集めたのは、番組を去った人気キャラクターが最終回にそろって復帰したため。また、くしくも高視聴率を叩き出した“2時間スペシャル”編成は、15年前の初回放送と同じだった。「ER」の初回2時間スペシャルは1994年9月19日(月)に放送され、2380万人の平均視聴者を獲得。その後、木曜午後10時枠でレギュラー放送を開始したときには2300万人が見ており、15年にわたり同じ枠に君臨し続けた。
最高視聴者数は、98年5月14日に記録した4780万人。その前の時間帯で放送された「隣のサインフェルド」の最終回の影響もあって、高視聴率を叩き出すことができた。15年の歴史の中で、番組視聴率トップを4回、ドラマ視聴率トップを10回、そしてNBCのドラマ視聴率トップを12回達成している。
長きにわたり制作総指揮と脚本を務めたジョー・サックスが、ヒットの秘密を振り返った。今日では日本でも当たり前になった医療現場のリアリティを描く物語や映像も、番組開始当初は開拓者につきものの苦労と批判があったようだ。1994年にスタートした「ER」は、まったく新しい医療ドラマだった。とことんリアルな描写が、わずか2、3カ月で視聴者の心をつかみ、アメリカ中が毎週木曜の夜にクック・カウンティ総合病院のER(エマージェンシー・ルーム)で起きる人間ドラマにくぎ付けになった。だが当時、批評家からはいろいろな批判があった。この場を最後のチャンスとして、それらの批判に対応することで「ER」が放ちつづけた魅力を検証する。
批判1「血が多すぎる!」
かつての医療ドラマは患者よりも、医師を描くことに焦点を絞っていたが、我々のカメラは傷のディテールや手術の手順をリアルに映し出すことを目的としたんだ。
批判2「医者たちの言っている言葉がわからない!」
登場人物たちは、複雑で専門的な医学用語を話す。ある医師は同僚の手から注射器をむしりとって、「やめろ! 彼は高カリウム性だから、スクシニルコリン投与は上室性頻拍を招く!」なんて言うんだ。さっぱりわからないだろうけれど、人物の感情や現場の臨場感は手にとるようにわかるだろう?
批判3「カメラの動きに酔いそうだ!」
ステディカムによる動きの大きな撮影手法は、このドラマのトレードマークと言えるビジュアルとペースを生み出した。それまでのテレビドラマと違って、「ER」のセットは天井を低くして劇場用のライトを埋め込んであるんだ。これによって、カメラが廊下や複数の部屋を縦横無尽に動き回れる。ドキュメンタリーのような“ザラザラした”ショットが可能になったんだよ。
批判4「ストーリーについていけない!」
普通のテレビドラマが1つや2つ、もしくは3つのストーリーから成り立っているのに対して、「ER」は1時間に30人の患者が出てくるからね。ある者はあっという間にいなくなり、ある者は数エピソードにまたがって登場するんだ。
我々は、実際に医療の現場で起こっている出来事を細かくリサーチし、実話も多く盛り込んでストーリーをつくった。さらに、上記のようなリアルな要素の数々が、「ER」をエキサイティングでセクシーなドラマにしたんだ。初めのブームが過ぎ去ったあとも、核となるパワーは素晴らしい俳優陣の演技と化学反応し続け、常にフレッシュで心をつかむ物語をおくり出してこれたんだよ。