青春タイムトラベル ~ 昭和の街角

昭和・平成 ~良き時代の「街の景色」がここにあります。

ささやく夜 ~空気がつめたく感じる時

2015-10-17 | 青春の音盤

「一番好きな季節は?」という質問に僕は答えを持っていません。でも一番好きな「時」はあります。それは11月初旬の、夜の空気と冬の朝の空気を感じられる時間です。この季節の夜の空気は暑くもなく寒くもない。ほんの少し肌寒いかな?というくらいの時がベスト。

いろんな楽しい事は、いつもこの空気の中で経験してきました。高校進学のための受験勉強を真剣に頑張ったのも、大学受験勉強の最後の追い込みをかけたのも。スポーツの秋と、いろんな試合を経験したのも。学費を稼ぐために現場仕事や、京都で外国人相手に観光案内をしたのもこの季節。

ただ、とにかく時間が経つのが早かった。毎日少しづつ寒くなって行くのが寂しく感じるのが、この季節でした。レコードを聴くのが楽しくなるのも、この時期から。夏の湿気がなくなり、空気が引き締まり、スピーカーから流れる音がとてもきれいに感じたものでした。そう、聴いたのではなく、感じられました。

晩秋の夜に一人で聴いたのは「カーラ・ボノフ」の歌。アメリカで以上に、日本で愛されたシンガーだと思います。1979年に発売された彼女の2枚目のアルバム「ささやく夜」は大ヒット。デビュー前からリンダ・ロンシュタットに曲を提供するソング・ライターとして有名だった彼女だが、1977年にデビューするやいなや、ウエストコーストの恋人として、日本人の心をつかんでしまいました。この季節には外せない1枚です。

朝の空気はスカッとした空気。友人と徹夜で酒を飲み、お決まりの学生の会話を弾ませた後の朝。信号機だけが一台の車も無い道路に点滅している。当時流行したビリヤードを徹夜でした後もそう。思いつくまま何処かにドライブに行くのも、大学に行くのも、眠るのも、どれでも自由に選べる元気がみなぎっていた。でも一つだけ今かなうなら、夜の空気だけでなく朝の空気も心の中にいる大切なガールフレンドと一緒に感じたかったと思う。夜の空気は別れの香りが少しするけど、朝の空気は始まりを感じるから。

学祭シーズンの朝晩の空気は、歳を重ねた今でも、毎年変わらずあの頃の感覚を思い出させてくれる。感じる場所は違っても、自分の心の中にいる人も、この空気を同じように感じている。ほんの一瞬、あの時の自分たちの姿を見たような気持ちになる秋。

ほんのわずかだけ、あの頃と空気が違うように思えるのは、今の自分があの時よりも、心が温かいからでしょうか・・・。