横溝正史の作品の文庫「表紙」が、昔のおどろおどろしい杉本一文氏の作品に復刻!しているのをご存知ですか?
懐かしいというか、やはりこれでなくては・・・。 もう45年以上前、僕は中学1年の時、これらの横溝作品を読み、理解し、日本の血縁というものに身震いしました。おどろおどろしい。「血は水よりも濃い」と言いますが、日本の村社会や血縁関係が嫌になりました。自分は自分だと。アメリカ大好き、自己責任・個人主義が好きになったのは、横溝作品からの反動だったかも知れません。(笑)
後年展開された、角川映画のメディア・ミックスの宣伝手法も当時は物凄く斬新で、「犬神家の一族」(1976)のTVのコマーシャルで大量に流された「読んでから見るか、見てから読むか」のコピーは、誰もが口にしていました。
この、当時の文庫本に挟まれていたチラシ。裏面には「犬神家の一族」公開の、全国劇場名一覧が。今では消え去った劇場名が並んでいます。時代の流れを感じるには、時にはこういう1枚のチラシで十分ですね。
翌年の金田一耕助シリーズ第二弾の「悪魔の手毬唄」(1977)では、作者・横溝正史本人に「私は、この恐ろしい小説だけは、映画にしたくなかった」と言わせたコピーで興味を惹きつけ、同年の第三弾「獄門島」では、作者・横溝正史に今度は「原作者であるところの私でさえ、犯人がだれになっているか知らされていない」と言わせて、僕らを大いに驚かせました。原作者が犯人を知らされていない・・・って、それ何だ?と、余りの無茶ぶりに笑ったものです。
横溝作品では、「悪霊島」(1981)の「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい」のコピーと、映画にザ・ビートルズの「レット・イット・ビー」と「ゲット・バック」を使ったのも忘れられませんが、公開1年弱前のジョン・レノン暗殺のニュースを本編に折り込むという荒業にも驚きました。契約期間の問題から、「悪霊等」のDVDにもビートルズの曲は入っていませんが、劇場公開当時には、作品にもCMにもビートルズのオリジナル曲が使われ、「レット・イット・ビー」と「ゲット・バック」のカップリング・レコードまで発売した角川の当時の力・・・恐るべしと言わざるを得ません。