この林望先生は旅の達人(ホントは大学の先生)。
先生の著書の中に「どこへも行かない」旅、というのがある。
どこへも行かない、というのは「観光地」や「催し」とかを目指して行かないということで、つまり目的地が無いということ。目的地が無い旅とは何かというと、旅の道程こそを楽しむということらしい。
先生はとくに、ヤバそうな林道や畦道がお好きなようで、レンタカーのアンダーボディをこするような深い轍の道へ、あえて突き進む。
その先にあるのは朽ちた廃屋であったり、一面の芥子の花畑だったり・・・。
こういうやり方で旅するのは、相当時間に余裕がいるし、感性にもたいそう特殊なベクトルが必要かも。
感性といえば、やはり人それぞれ。その時の精神状態にも左右されるもの。こういうことがあった。津軽を旅したとき、旅の後半でボクは「十三湖」へ立ち寄った。
太宰の紀行文「津軽」の終盤に「十三湖」を描写した一節がある。彼は混雑したバスの車窓からの眺めを「風景の一歩手前のもので、少しも旅人と会話しない・・・、人に捨てられた、孤独の水溜りである云々」と記述した。
けれど、実際ボクがそこで見た「十三湖」は、穏やかな岸辺が続く、開放的な様子がとても美しく、津軽を代表するひとつの原風景だと感じた。
林望先生だったらどうなんだろう。・・・きっと嫌いだろうな。「しじみラーメン」ののぼりがうるさすぎる。
旅は自分の感性が、どこいら辺に在るか教えてくれそうだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます