何か古色蒼然とした選択だが、昨日、このレコード聴いて「さすが名盤」と思った。
ベームがウイーンフィルを従えて演奏したこのベートーヴェンの交響曲第5番「運命」には、他にはない説得力がある。
それは、作曲者であるベートーヴェンの意図に忠実であろうとする彼の信条がにじみ出ている演奏のように思えるからだ。つまり、当時、ベートーヴェンが置かれていた苦境とそこからの脱出という闘いが説得力をもって語られている。
反対に、例えばカラヤン・ベルリンフィルによる演奏を聴くと、如何に聴衆に受けようかというある種の作為のようなものを感じてしまう。
いずれにせよ、ベームのそれは、正に人類遺産的価値を持つ第一級の演奏であると思った。
当初、あの「運命の動機」による3連打によって打ちひしがれた人々が、次第にそれを克服して前進し、最後には勝利の栄冠を勝ち取るのだが、いつの時代にも(この演奏は)人々に勇気を与え続けるに相違ない。