2024年上半期第171回直木賞受賞作。
「小説宝石」2021~23年に掲載された短編6編を収める。270頁。
受賞が決まった日の夜、図書館に予約を入れると「2人待ち」とのことであったが、幸い、翌日には手に取り読み始めることができた。
現代の渦にのまれ、もがき、のたうつ人々が見た地獄絵とは?
「私は幽霊になって、私から大金を奪い、増水した河に突き落として溺死させた親友や恩師を許さない・・・。」
過去の候補作、「光のとこにいてね」と「スモールワールズ」は拝見していたが、どちらも何か作り物っぽくて感心しなかった。
しかし本作は、なるほどそういう世界が存在するのだ、と納得させる物語性と凄みに加え、筆力も冴えて受賞作にふさわしいと思った。