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新潮社 |
葛飾北斎。その名前は知っていても浮世絵を直に見たこともなく、まして、その人となり、またその娘も絵師だったことは知りませんでした。
江戸の浮世絵師、北斎。そして、娘お栄こと葛飾応為(おうい)を描いた朝井まかてさんの最新作。
応為の人生を示す資料はごくわずか。そして、応為の作品と認められているのは現在たったの10点。しかし、北斎の工房で描いていた応為は北斎とされている作品でも仕上げたのは応為ではないかというものがあるそうです。
先日、紀伊国屋で作品中にでてくる浮世絵のリーフレットをもらったのでそれを見ながら読んだのですが、北斎やお栄が絵にかける情熱は作品中で十分伝わり、また実際の絵を視覚的に見ることにより、このホンモノを見たい!という気持ちになりました。
ネタバレを避けると突っ込んだことが書けないのですが、
歴史的事実、それに加えてお栄の人生を現代の作家が埋めていく。埋める、すなわち想像で描かれるということは作者の解釈におう部分が大きく、私はこの部分が胸に迫りました。ただ一身に、いや結果的にか、一度の結婚を経て独身で過ごした人生。そこには、その事実を受け入れ、ただ自分の前に打ち出された課題を乗り越えようとする生き方。この作品が働く女性に支持されたということだそうですが、たとえ特別な仕事をしていなくても、仕事に生きていなくても、胸に響きました。
お栄はただまっすぐに歩き「気が付いたら」そうなっていたのです。天賦の才のあるなしはさておき、ただ歩き続け、気がついたら私もいまここにいた。私もまた「さあ、行くよ」と顔をあげて歩いて行きたい、たとえその歩む道がひとりだったとしても。
