コロナ感染で労災認定 昨年度1万9000件余 “後遺症”で認定も
2022年5月14日 19時44分 新型コロナウイルス
新型コロナウイルスに感染し、労災と認められたのは昨年度、1万9000件余りで前の年度のおよそ4倍に増えたことがわかりました。
この中には感染後のいわゆる「後遺症」で労災認定されたケースも含まれていて、厚生労働省は「後遺症」の症状が続く場合は労災を申請してほしいとしています。
正社員や非正規雇用で働く人が新型コロナに感染し労災を申請した場合、厚生労働省は感染の経路を特定できなくても業務との関連性が認められれば原則、労災と認定しています。
労災と認められれば、指定された医療機関で原則として無料で治療を受けられるほか、仕事を休んだ時には一日当たりの平均賃金の8割が「休業補償」として給付されます。
また、亡くなった場合は遺族が労災を申請することができ認定されると遺族補償年金などを受け取ることができます。
厚生労働省によりますと新型コロナに感染し労災と認められたのは昨年度、1万9424件にのぼり、前の年度のおよそ4倍に増えたことがわかりました。
この中には感染後のいわゆる「後遺症」で仕事を休まざるを得なかったケースも含まれ、厚生労働省は後遺症の症状が続く場合は「罹患後症状」として労災と認定していて、申請をしてほしいとしています。
“後遺症”に苦しむ男性「理解不足の問題大きい」
新型コロナウイルスのいわゆる「後遺症」に苦しむ人からは会社に理解をしてもらうことが難しく職場への復帰ができないという声が出ています。
大型自動車のドライバーとして働いてきた40代の男性は、おととし11月、新型コロナに感染し肺炎で病院に入院しました。
肺炎の症状は1週間ほどで治まり退院しましたが、ひどい時には玄関のドアを開けるだけで疲れ切ってしまうほどの強いけん怠感や息苦しさがあったといいます。
また、意識がぼんやりとして、自分が話した内容をすぐに忘れたり信号を確認せずに車が行き交う交差点で横断歩道をわたってしまったりするなど、日常生活にも影響が出始めました。
このため改めて病院を受診した結果、去年3月に「後遺症」と診断されました。
男性は当時の状況について「血液が鉛のように重くなり、体じゅうを流れているような感覚が取れないし頭の中もずっと疲れているような状態で車の運転はまず無理だなと思いましたし、当たり前にふだんできていたことができなくなりました」と話しています。男性は労災を申請し、ことし1月、労働基準監督署は仕事が原因で感染したとして「後遺症」による休業も含めて労災と認定しました。
現在男性は休業補償を受けているほか、治療を続けて症状は少しずつ改善しているといいます。
ただ、休業補償は休業する前の平均賃金の8割で収入は落ち込んだままの状態が続いています。同居している母親は介護が必要で男性は国の貸付金を80万円借り入れました。
できるだけ早く職場に復帰したいと思い、勤務先の会社とも相談しましたが、いまも続くけん怠感や筋力の低下について十分な理解が得られていないといいます。
男性はドライバーの助手から少しずつ職場に復帰したいと伝えましたが、会社からは荷物を運ぶ仕事を担当してもらうと言われたということです。
体を使って荷物を運ぶ仕事はけん怠感などの症状が出ると続けることが難しいと説明しましたが、会社からはこの仕事が難しければ勤務先を変えた方がいいと言われているといいます。
男性は「職場の同僚からも『まだ残っていたのか』などと言われ、相談する相手はいないんだなと感じました。理解不足という問題が大きいと思いますし、後遺症がどれほどつらいものなのか、少しでも分かってほしい」と話していました。
職場への復帰や再就職を支援する自治体も
新型コロナの「後遺症」の影響で仕事を失ったり休業を余儀なくされたりする人が相次いでいるとして職場への復帰や再就職を支援する自治体も出ています。
東京 世田谷区は、新型コロナの「後遺症」に苦しむ人から職場復帰や再就職への支援を求める声が多いため先月から区の窓口で相談などを受け付けています。
職場への復帰を進めるために社会保険労務士が症状に応じて、出勤日を減らしたり、負担の少ない業務にしたりする相談に応じていて勤務先との調整は東京都の労働相談情報センターと連携し行うことにしています。
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