郵便局長の後継選び、配偶者も面接? 国会で問われた育成マニュアル
2022/06/01 09:00
(朝日新聞)
郵便局長の後継となる者は、配偶者も面接して協力的かどうかを確かめ、政治活動がなぜ必要かを教え込む――。そう記された「後継者育成マニュアル」が31日、国会で脚光を浴びた。約1.9万人の郵便局長でつくる任意団体「全国郵便局長会(全特)」が策定したものだが、岸田文雄首相は「自ら説明責任を果たして」と指摘。実際に局長を採用する日本郵便はどう答えたのか。
「マニュアルの存在は大問題。監督官庁として調査すべきではないか」
31日の参院予算委員会。マニュアルを示してそう質問した共産党の小池晃氏に対し、金子恭之総務相は「具体的な事実関係は日本郵政グループが説明する必要がある」とし、日本郵便側に説明するよう促した。首相も同様の答弁を繰り返した。
全特は局長が自ら後継者を見つけることを重要施策に掲げ、2019年には後継者選びや育成プロセスを示したマニュアルを策定していた。正式名は「郵便局長の後継者育成マニュアル」で、指導者の教材向け資料に位置づけている。
マニュアルでは、組織の活動を理解させて帰属意識を高めることが重要だとし、政治活動の必要性を教え込むよう求めている。
さらに候補者に配偶者がいれば面接に同席させ、配偶者にも局長会への理解や協力する意思があることを「確認事項」としている。
全特の会則には「政治的、社会的主張を行い行動する」と規定されており、局長会で局長候補と認められるには、選挙などの政治活動に励むことを約束させられる例が多い。
ただ、局長会は任意団体であり、問題は局長会の推薦者ばかりが採用される日本郵便の人事構造にある。
朝日新聞では昨秋以降、局長会に入らないと局長としての採用や昇格が難しい実態を報じてきた。民事訴訟の証拠資料として、日本郵便の人事担当課長が検察聴取に「会社の役職は局長会の役職と事実上連動している」と証言した供述調書も出ている。法律の専門家からは思想信条による差別にあたる恐れがあるとの指摘も出ていた。
31日の参院予算委に出席した日本郵便の衣川和秀社長は、全特が局長の候補者を探して研修をしていることは「聞いている」としつつ、全特策定のマニュアルには「当社としては関与していない」と語っただけだった。そのうえで、局長の採用は「本人の適性や能力にもとづいて厳正に選考している」と強調し、局長会による候補者探しとは別物だと主張した。(藤田知也)