建築現場で、向こう側から手前に向かってスコップ状のもので穴を掘る機械のことをバックホウという。バックホウには、大規模な土木工事から設備工事の際のちょっとした穴を掘る小さなものまであり、その小さなものを何度か、私も操縦したことがある。
小さなものとはいっても機械である。機械の一掬いは普通のシャベルの10杯分位はある。人力で作業すると数時間かかることが、機械だとほんの2、30分で終わる。機械の操縦に熟練すれば、大きな力で細かい作業もできるようになる。機械が発達して、操縦する人の手足、指先の動きをセンサーで感知してより細かい作業ができるようになると、マジンガーZも夢では無い、ということになる。今、開催されている愛知万博を紹介するニュースで、それと似たようなものを見た。すごいことだ。
私自身は屁みたいな力しか持っていない。が、その機械の中に入って操縦士になったとたん、強大な力を持ったモノになる。自分の力よりもはるかに強大な力が出せる操縦士は野望を持つようになる。この世を自分の思うように動かしたいという野望。そして、強大な力に理性を失った操縦士は、「俺様に歯向かうものは皆殺しだ」という気分になるかもしれない。強大な力を得る、それはすごいことだが、また、怖いことでもある。
強大な力を得るには機械の力に拠る、とは限らない。金の力も強大になりうる。独裁国家の権力者も強大な力を持っている。そして、“多くの人”の団結した力も、その“多く”の数が大きいほど強大な力となる。喩えて言えば、100人分の仕事をしてくれるバックホウも、1000人の作業員による仕事量には勝てないということ。
一千万人の人間が私の思い通りに動いてくれるとしたら、それはきっと、マジンガーZを操縦するよりもずっと強大な力になるだろう。ところが、普通は、人生を真面目に生きていれば、自分の思い通りになる人間なんて一人もいないし、そういう人間を欲しいとも思わない。ところが、稀には、他人を思い通りにしたいと思う人もいる。
他人を思い通りにしたいと思う人というのは、まあ、独裁国家の権力者のことを指しているんだが、独裁者たちは、他人の心を操るために恐怖政治という手法を取り、また、もう一つ、マインドコントロールという手法を使う場合もある。幼い頃からの教育で、将軍様は偉いのだ。尊敬しなければいけないのだ。歯向かってはいけないのだ。などと脳味噌の奥深くに染み込ませる。すると、そういう人間が多くできあがる。
このところのニュースは中国の反日デモがトップ。多くの時間、私もそれを観ている。先週、「中国人留学生の多くは日本のことをあまり好きでは無い」などと書いたが、それは何故かと不思議に思っていた。いくらなんでも60年前のことで、さほど深い憎しみを覚えることは無かろう。他に何かあるのだろうかと思っていたら、ニュースで知った。今の中国の若い人たちは、日本は酷い国だという教育を受けたとのことだった。教育による日本嫌いであったのだ。中国政府は、どういう意図(テレビでは学者やジャーナリストがいろいろ解説していたが)かは、私には理解できないが、密かに自国の国民をマインドコントロールしていたわけだ。憎しみを育てて何になるというのだろう。臥薪嘗胆なのか?
記:島乃ガジ丸 2005.4.15