私の父が使っているルームランナーは、人がその上を歩くとベルトが回る式のもので、歩けば歩く早さ、走れば走る速さで回ってくれる。つまり、人の速さに合わせてくれる。
ジムなどに置いてあるルームランナー、私はその実物を見たことは無いが、テレビで見る限りではどうやら電気仕掛けで動いているようだ。速さを設定すると、機械がその通りの速さで勝手に回ってくれる。人はその速さに合わせて動けばよい。そうすることによって効率的に、合理的に運動をすることができる。
現代は、世の中の多くが機械仕掛けになっており、効率的に、合理的に生活することができるようになった。洗濯機が無ければ、掃除機が無ければ、車が無ければ、などなど考えると、ホントに機械仕掛けのお陰で、楽な生活をさせてもらっているのだ。
機械仕掛けのルームランナーはスイッチを切れば止まってくれる。走り疲れたらスイッチを切って、休めば良い。だが、もし、止まらないルームランナーに乗ってしまったとしたら、そして、そのルームランナーから落ちると死んでしまうとしたら、ずっと走り続けなければならない。疲れ果てて死ぬか、落ちて死ぬかの二者択一となる。恐ろしい。
現代は、世の中の多くが金拝主義となっており、効率的に、合理的に金儲けをしなければならなくなってしまっている。いかに儲けるかを考えると、能力以上の速さで走らなければならない。能力以上の速さでまた、走り続けなければならない。のんびり歩いたり、時々立ち止まったりするのは、金儲け主義の世界では無駄なこととされる。そんな「止まらないルームランナー」のような世界で、電車の運転手は走り続けていたのだろう。
記:ガジ丸 2005.4.29