ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

見聞録022 気楽な子作り

2008年07月18日 | ケダマン見聞録

 マナが帰ってきてからというもの、ユクレー屋はマナとユーナ、女二人のおしゃべりでいつも賑やかだ。時にはマミナも加わって、女三人で姦しいほどになる。次から次へと話題を変えながら話は途切れない。よくもそんなに続くもんだと感心する。
 そんな中でよく耳にするのは、幸せいっぱいのマナに対し、「恋人が欲しいけど、できない。恋がしたいけど、できない」と、ユーナがしきりに嘆いていることだ。
 「そういえばさ、テレビでさ、恋人がロボットっていうドラマがあったんだ。そんなロボットが手に入るんだったらさ、私も欲しいと思うよ。」と、しみじみ言う。そんなことから、俺はある星の話を思い出した。ということで、ケダマン見聞録その22は、『気楽な子作り』という題で、マナとユーナを相手に語る。

 その星は地球より数段、科学が発達していた。人間型ロボットは既に実用化され、人工知能で自己判断できるロボットもいた。人間の日々の生活を補助するロボットはいくつもの種類があり、人間社会と調和し、さまざまな場面で活躍していた。
 その星はまた、地球人より数段、精神も成熟しており、人々はそれぞれの欲望を野放しにすることは無かった。よって、犯罪の少ない、平和な社会となっていた。
 科学の発達と精神の成熟で、一時期危うかった星の環境悪化も既に、持続可能な自然環境へと生まれ変わっていた。自然エネルギーの活用も十分にできており、食料の生産も安定していた。よって、そこには何の不安も無い、・・・ように見えたが、

 欲望を押さえ込む教育が何世代か続いて、確かに社会は平和となり、食料生産や消費もきちんと統制され、飢えに苦しむという不安も無くなった。社会全体に余裕ができ、福祉も充実した。病気や怪我をしても、何とか生きていけるようになった。だが、「少なくとも生きてはいける」という安心感は、人々の動物としての本能を希薄にした。
 「普通に働いていれば楽しく生きていけるさ。」と思う人々は、「わざわざ面倒なことをする必要は無いさ。」という気分になる。あれこれ面倒な要求をしてくる生身の恋人よりも、ほぼ自分の思い通りに接してくれるロボットの恋人を選んだ。
 ロボットの恋人は、姿形も自分好みに作ってもらえる。それは、見た目も心の持ちようも自分の理想の相手となる。そんな相手と、付き合うまでの心のやりとりという面倒なことは一切せず、すぐに付き合うことができる。付き合ってからも恋の駆け引きなどはほとんど(やきもち焼いたり、拗ねたり、甘えたりなど少しはある)無い。毎日が楽しい恋愛だ。ということで、男女共に、「恋人はロボット」という若者が増えていった。

 「恋人はロボット」となると当然、セックスもロボット相手となる。そういうことのできるロボットが生産され、そして、大いに売れた。しかしながら、雌型ロボットに妊娠する能力は無く、雄型ロボットに妊娠させる能力は無かった。そこまで技術は進歩していなかった。なので当然、その星の人類の人口は減っていった。
 「恋人ロボット」禁止の声も上がったが、後戻りには困難が多すぎて、結局、人工授精の方向へ進んだ。ロボット相手の恋愛は楽だったし、ロボット相手の生活も楽だったし、ロボット相手の子作りも楽であった。人々は当然、楽を選んだ。
 雄人間は雌ロボットに射精して、それを急速冷凍保存して、雄ロボットの体内に移す。雄ロボットはそれを雌人間に射精する。かくして、気楽な子作り社会が誕生した。
     

 場面はユクレー屋に戻る。
 「どうだ、こんな社会。ユーナの望み通りだとこうなるが?」
 「うーん、何か、味気無い感じがする・・・。」(ユーナ)
 「そうだねぇ、私は嫌だなぁ、そういうのは。自分の思い通りにはならない相手と一緒になって、一緒に幸せを築いていくのがホントの幸せって思うさあ。」(マナ)
 「たぶん、私もそうだと思う。よっしゃ、ロボット恋人は無しにしよう。人間の男を捜すことにしよう。よーしっ、頑張るぞー。」(ユーナ)
 「ところでさ、その星はその後、どうなったの?上手く行ったの?」(マナ)
 「おー、平和という意味では上手く行ったみたいだな。雄ロボットに提供される精子はランダムに決められたので、雌人間から生まれる子供はどこの馬の骨の者か判らないものとなった。多くが馬の骨ばかりとなって、結果、平等な社会が生まれたのさ。」
 「ふーん、めでたしめでたしなんだ。でも、何か、微妙だね。」(マナ)
 「そうだな、じつは、平等とは言っても、ロボット相手に満足する多数の人間と、そうでない少数の人間との間には大きな差があったんだ。ロボット相手に満足する人間は、ロボットと同じくらいに扱いやすいモノとなっていた。だから、まあ、何て言うか、支配する方から見れば、彼らもロボットなんだな。エネルギーを与えてやれば働いてくれるというわけだ。ロボットのようになった人々がホントに幸せかどうかは分らん。」

 語り:ケダマン 2008.7.18


天変地異の予兆その2

2008年07月18日 | 通信-科学・空想

 ブーンという音で目が覚めた。蚊では無い。もっと機械的な音だ。すぐ傍から聞こえている。携帯電話か、ラジオを消し忘れたか、あれこれ触ってみるが、分らない。起きる。時計を見る。草木も眠る丑満つ時を1時間ほど過ぎている。幽霊でもないようだ。
 耳を澄ませて音のありかを探す。サイドテーブルの下から聞こえる。見つけた。血圧計だ。手首で測る愛用の小さな血圧計。それが箱に入ったまま作動している。測る手首が無いのでセンサーが働かない。よって、止まらない。箱の中で太り続けている。
 これまでにいろいろ不思議なことを経験しているが、箱の中に入った血圧計が勝手に動くなんて、これには驚いた。私の不思議ベスト3に入るかもしれない。
 その不思議があったのは先週土曜日の午前3時。先週のコラムに書いているが、木曜日の夜には、ベランダにゴキブリの団体がやってきたという不思議もあった。
  今週月曜日の夕方、簾越しに西日の射す窓の傍で、パソコン開いて文章書きをしている時、ベランダの塀に4羽のシロガシラが止まった。私から斜め前方2mと離れていない。2羽は親鳥、残りの2羽は雛、頭に白い毛があるかないかで判断できる。その親子が私の部屋、寝室となっている所、血圧計の置いてある所を眺めている。「何じゃいこいつら、何を見てるんだ?」と思って、網戸を開けようとしたら逃げた。
 翌日火曜日の夕方、前日と同じく西日の射す窓の傍にいたら、網戸に何者かがしがみついているのに気付いた。バッタだ。じっと動かないので写真を撮る。タイワンハネナガイナゴのようである。1階は庭になっていて草も野菜もいっぱいある。何でわざわざ草1本も無い2階のベランダにやってきたのか不思議。「おめぇ、何しに来た?」である。
          

 何か身辺の異変を予兆して、あるいは天変地異を予兆して胸騒ぎがする、なんて繊細なセンサーを私は持ち合わせていない。なので、ゴキブリや機械やシロガシラやバッタがわざわざ私に何かを知らせようとしても、それは無駄というものである。「言いたいことがあるなら、はっきり言え!」としか思わないのである。
 まあ、しかし、何かの知らせかも知れないので、ちょっと考えてみる。
 天変地異はどうしようも無い。来るなと言っても来るときは来る。来たら諦めるしかない。そこで、身近な人の不幸を考える。が、私に知らせを寄こすほど身近な人には不幸が起きそうな人はいない。ならば、と考えて、ハッとする。・・・私か。私の体に何らかの異変が起きるということか。・・・ちょっと不安になった。

 今年の2月、高校三年のクラスメイトKが亡くなった。Kは、特に容姿端麗というわけではなかったが、いわば心の美人で、クラスのリーダーであり、人気者であった。そんなKが、若くして死んだ。美人薄命だなあーと感じた。
 先週、高校二年のクラスメイトだったRが亡くなった。Rは容姿端麗であり、女性としての魅力に溢れており、私の友人の何人かは彼女に惚れていた。彼女はまた秀才でもあった。理数に強く、文才もあった。才色兼備も薄命だなーと感じた。
 二人の美人は病死であった。中年になると、体のあちこちにガタがくる。私は美男子では無いのだが、いつ倒れるかしれない。周りで不思議なことが起きても、胸騒ぎのしない私だが、同級生の死は、自分の死というのも身近であることを感じさせた。

 記:2008.7.18 島乃ガジ丸