ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

沖縄の普通『沖縄』

2012年08月03日 | 通信-音楽・映画

 ナツヤと名付けている宜野湾の小さな畑、その近くに住む爺様Hさん、婆様Zさんと仲良くなり、たびたびお宅に伺ってあれこれ教えを乞うている。二人と知り合ったのは今年3月19日、ナツヤで農作業をしている時に散歩途中のZさんに声をかけられた。その日の内に二人の住む家にお邪魔して、昔の話、薬草の話、平和活動の話などあれこれ伺っている。二人は平和運動家であった。その方面の知識が豊富であった。
 そんなある日、二人の家でお茶とお菓子を御馳走になりながら、沖縄の祖国復帰運動の頃の話となった。復帰運動が盛んだったのは私が中学から高校にかけてのことで、屋良朝苗、瀬長亀次郎、上原幸助などといった政治家達が奮闘していたのを覚えている。
 Hさんはその頃の資料も豊富に持っていて、そのいくつかを私に見せてくれた。その中の一つに、当時中学高校生だった私にも懐かしいものがあった。「固き土を破りて 民族の怒りに燃える島 沖縄よ」という歌、その楽譜と歌詞があった。中学高校生の頃に聞いたきりだが、歌詞をだいたい覚えており、メロディーはしっかり覚えていた。
 しかし、ふと気付いた。復帰運動について上記の政治家と歌以外の記憶が私に無いことを。中学高校の頃の私は「彼女が欲しい、キスしたい、抱きたい、おっぱい揉みたい、セックスしたい」ということが脳味噌の90%を占めていたからだと思う。

 復帰運動、及び復帰は沖縄にとって大きな歴史だ、「いずれガジ丸HPで紹介しなくちゃあいけない」と、今や「彼女が欲しい、・・・したい、・・・したい」が脳味噌の数%しか占め無くなったオジサンは、それを頭にインプットした。そのインプットが消え去らない内のある日、宜野湾市立図書館へ行くと、その時代を描いた映画があった。
 劇映画『沖縄』、解説がビデオの表紙にある。それを要約すると以下、

 この作品は本土復帰前の1969年に製作上映された・・・1968年11月沖縄初の主席選挙で民主統一候補の屋良朝苗氏が当選・・・沖縄県民の本土復帰への願いがここに結実した。それから1年、沖縄の日本復帰は大きな高まりを示した・・・しかし、アメリカの核戦略基地としての日本復帰であるとすれば、それは平和を守る人々の願いを歪め、同時に歴史の歪曲も意味する。ここに沖縄無条件全面復帰運動の意義がある。

 後半部分が何を言っているのか私にはよく理解できない。「歴史の歪曲」って何のことな のか私には不明。映画を観終わった後も、「核戦略基地としての日本復帰」、「歴史の歪曲」などといったことは見えてこない。映画はしかし、十分楽しめた。

 出演は佐々木愛、地井武男、加藤嘉など。地井武男は沖縄のヤンチャな若者を演じていた。そういう若者、おそらくいたであろうと納得できるようなキャラクター。
 加藤嘉は久々に目にしたが、つくづく名優だと思う。彼の演じる人間を映画やテレビドラマでいくつも見てきた。彼は善人も悪人も演じる。彼の演じる善人はいかにも善人で、彼の演じる悪人はいかにも悪人である。この映画で彼は他人を犠牲にしてでも自らの利益を求める普通のウチナーンチュを演じている。「普通の沖縄人」、そう、ウチナーンチュはけして犠牲者とか、素朴とか、善人ばかりでは無いのだ。良い映画でした。
          
          

 記:2012.8.3 島乃ガジ丸

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の戦争遺跡』沖縄平和資料館編集、沖縄時事出版発行


美童物語

2012年08月03日 | 沖縄03音楽芸能・美術工芸・文学

 子供の頃、私は漫画が大好きだった。少年向け漫画雑誌をよく読んでいた。少年マガジン、少年サンデー、少年キングなどの週刊誌、少年、少年画報などの月刊誌があった。作品としては「鉄腕アトム」、「巨人の星」、「おそ松くん」、「伊賀の影丸」、「鉄人28号」、「明日のジョー」、・・・数え上げればきりが無いので以下略。
 青年と呼ばれる年代になってからも私は漫画を読んでいる。ビックコミックとかアクションとかいった青年向け漫画雑誌。作品としては「ゴルゴ13」、「あぶさん」などがあった。中でも「じゃりんこチエ」はファンで、単行本もほぼ揃えていた。もちろん、助平なお色気雑誌、さらに激しいエロ雑誌なども多く読んでいる。
 オジサンと呼ばれる歳まで青年向けコミックはたびたび読んでいて、「家栽の人」はよく覚えている。少年向けではただ一つ、「ドラゴンボール」はほぼ欠かさず読んでいた。従姉の息子がまだ小中学生だった頃、彼が少年ジャンプを愛読していていたので、それを借りていたのだ。そのお陰で、ファンでは無かったが「北斗の拳」も覚えている。
 雑誌では無く直接単行本を買って愛読していたのもある。いしいひさいち全般、手塚治虫の青年向け、大友克弘あれこれ、東海林さだおあれこれ、谷岡ヤスジあれこれ、杉浦日向子あれこれ、やまだ紫あれこれ、ますむらひろしあれこれ、その他「遥かなる甲子園」など私の所有する漫画単行本は200冊を超えていたと思う。

 40歳を過ぎて老眼になって、老眼鏡をかけるのを面倒臭がって本をあまり読まなくなって、ついでに漫画もほとんど読まなくなった。
  先日、そんな私が久々に漫画の単行本を読んだ。埼玉に住む友人Kが「これ、すごいいいよ」と勧めてくれたもの。Kは「美女Hさんへプレゼント」のつもりだったが、その前に私が借りて読んだ。久々の漫画、それは『美童物語』、その1巻、2巻。

 『美童物語』の作者は比嘉慂というお方。私のまったく知らない作家。比嘉という姓からウチナーンチュであろうと想像される。その通り、沖縄県那覇市生まれとのこと。作品の『美童物語』も沖縄を描いている。1巻も2巻も沖縄の戦中の頃を描いている。
 たくさんの人に読んで貰いたいと思って『美童物語』は今手元に無く、たくさんの人が集まる友人Iさんの店に預けてある。なので、確かなことは言えないが、私の錆びかけた脳味噌が覚えている限りでは、1巻の中に4~5編の短編が収録されている。
 短編は、登場人物が何人も重なって出てくるが、それぞれ独立したテーマを取り上げている。時代は昭和、戦争が近付いて来る頃から戦争が始まり、出征する兵士、戦死した兵士(骨も灰も無いが)などが出てくる頃。内容は「糸満売りの少年少女」、「辻遊郭」、「ユタ」、「方言札」、「帰還兵」、「カミダーリー」、「風葬」などなど、錆びかけた脳味噌なのでタイトルも覚えていないし、順番もこの通りでは無い。

 久々の漫画に私は久々に感動した。これほど沖縄の空気を、気分を的確に表現した漫画は、あるいは小説(全部読んでいるわけでは無い)、映画(全部観ているわけでは無い)も含め、この『美童物語』を超えるものは無かろうと思うほど。
 作者の比嘉慂(ひがすすむ)氏を私は全く知らなかったが、1953年那覇市生まれとのこと。そりゃあもう、この作品はウチナーンチュでなきゃ描けない。であるが、1953年だとまだ60歳手前だ。その歳でこれほど深く沖縄の雰囲気を理解し、表現できるとは凄い。おそらく、そうとうの勉強をしたのであろうと想像される。
 『美童物語』は沖縄の空気を的確に表現した最高傑作と私は感じた。それは私の感性によるものだが、でもまあ、沖縄に関心のある方にはぜひとも勧めたい一冊。
     

 記:2012.7.27 ガジ丸 →沖縄の生活目次