今年(2014年)3月28日、脱サラ農夫の、今は八百屋の売り子をやっている友人Kの店を訪ねた帰り、久々に吉の浦海岸を散策した。吉の浦海岸は陸上競技場や野球場、テニスコートに体育館などを備えた運動公園になっていて駐車場も広い。車を停めるに困ることはない。が、その日、私は駐車場に車を停めず道路沿いに駐車した。私がよく海鳥ウォッチングをするポイントがそこから近いので、しばしばそうしている。
その日、散策を終えて車に向かって歩いていると、車の後部の車輪傍に1匹の犬が座っているのが見えた。大型犬だが、犬に興味の無い私には何という種類なのか不明。近付くにつれ首輪をしていないことが判った。野良犬のようだ。
さらに近付いて行くと、犬は立ちあがって車から離れた。その大きさなら戦えば勝つであろうが、吠えもしなければ唸りもせず、威嚇もしない。人に遠慮することを知っている賢い犬。あるいは、そう訓練された犬。元はきっと飼い犬だったのであろう。
犬に興味は無いが、黙って車から離れたその謙虚さに「ありがとう」と心の中で感謝しつつ、まだ近くにいるであろう彼を振り返って見た。彼は10mほど離れた場所でポツンと立っていた。彼は3本脚でポツンと立っていた、後ろ脚の1本が無かった。
「厳しい犬生を送ってるんだな、頑張れよ」と心の中で激励し、そんなこと思いながらも私は彼に食い物や飲み物を何一つ与えること無くその場を去った。
それから約ひと月半後の5月11日、私の畑なっぴばるからの帰り、畑からほんの1、2分走った辺りの道端に鳥が死んでいるのに気付いた。大きな鳥だ、車の中からは「サシバか?」と思った。その程度の大きさだった。「空高く飛ぶサシバが交通事故か?」と不思議に思いつつ傍を通ったらサシバとは違うことに気付いた。車を停め、バックさせ、降りて近付いてよく見ると、今まで見たことのない鳥であった。写真を撮る。
家に帰って沖縄の野鳥を紹介している図鑑を調べる。ミゾゴイという種に似ているが目元が違う。死んだら目元が変化するのかもしれないが、そうと断定はできない。
「そうだ、野鳥の会に問い合わせてみよう、沖縄支部なんてのもあるはずだ」と、撮った写真を4枚、腹側、背側、顔、メジャーを傍に置いて大きさが判るものをそれぞれサイズを小さくし、メール文を書いて、「さて、野鳥の会沖縄支部のメールアドレスを調べなきゃあ」となる。「もし、珍しい鳥なら実物を見たがるかもな」と、素人オッサンはもうすっかり野鳥の会沖縄支部が興味を示すものと思い込んで、何だか良い気分。実物はしかし、翌12日の夕方には消えていた。誰かが葬ったか、野犬に食われたか。
13日に友人Oの店へ行ってネットを使わせて貰い、野鳥の会沖縄支部を調べる。沖縄支部は無かったがヤンバル、石垣、西表支部はあった。ところが、いずれもメールアドレスが載っていない。ならばと、日本野鳥の会のHPを開いた。そこなら「こんな鳥がいるけど」といったメールも多いはずなので、アドレスも当然載っているに違いない。ところが、アドレスは無く、「メールは受け付けない」とあった。
何者か知りたいのであれば、自分で図鑑を開いて調べなさいというようなことが書かれてある。「そういうことか、しょうがない」と諦めたのだが、何者か知られることも無く消えた鳥、彼は浮かばれない。もしも、珍しい鳥だったらと思うと私は残念。
記:2014.5.16 島乃ガジ丸